俺は“見ちゃいけない”映画だった!『あのこは貴族』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
こんにちは、黒田勇樹です。
演出をやらせていただく舞台「白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます」の稽古が順調に進んでおります。今回は俳優さんの人数が多く、新型コロナ対策で全員が集まって密にするわけにもいかないので、これまでの現場とはちょっと違った稽古のやり方をしたりしているので、ちょっとチャレンジングです。
チケットも発売中ですので、ご興味を持っていただけたらぜひ!
さて今週も始めましょう。
医者一族に生まれた世間知らずの箱入り娘が、更に上流階級の家に生まれ将来は政治家になることを約束された弁護士と婚約して、色んな思いをする中でその弁護士の浮気相手以上元カノ未満みたいな自由に生きる一般人女性と出会い、自分の人生について考える。
みたいな、あらすじ…これだけ書くとキラキラした少女漫画の様な内容を想像するかもしれませんが「恋愛映画」と書くには、ちょっと違う。
現実的な「女の子たちの世界」が、奇麗な画と落ち着いたストーリー展開で抒情的に描かれて行く、非常に観やすいし「良い映画!」って感じの、秀作でした。
ただ…こちとら団地の母子家庭で育った38才のおじさんだぜ!
前半描かれる医者一族の階級社会だけでも「あ、へぇ、そうなんだ…お金持ちも大変だね…」とか思ってるのに、その階級の人たちが「私たちより上」と呼ぶ階級の人たちが出てきちゃって、もうなんかメンインブラックのラストか最近のドラゴンボールを見ているみたいなスケール感。
あ、いや、ストーリーはよく出来てるし面白いんだけど…“俺には”共感する要素が見つからない!
で、ようやく登場する一般人の女の子。この子との対比で「いよいよ“あのこは貴族”」の視点が出てくると思いきや、この一般人の子の立ち位置は、一応もう1人の主人公として彼女の生活や心境も描かれるんだけど前半からの箱入り娘のボリュームが多すぎる&弁護士の男と出番が同じか若干少ないぐらいなので、立ち位置としては主人公のメンター的存在どまり。
「せめて僕らから見た格差みたいな視点を見せてくれ!」と思いながら話が進むんですが(この映画はそこが本題じゃないので、あくまでも俺の視点ね)、この一般の子が、セリフの中でも「東京は、私たちみたいな人が作った幻の街」みたいにいう様に「地方から出てきて“東京”で必死に生きている女の子」
俺、東京生まれだから、そっちの視点もわかんないよーーーーーー!!!!
唯一、共感できたのがこの「東京に出てきた子たち」が語る「出てきてすぐは必死で、年上のおじさんに食われがち」みたいな会話に出てくる…“おじさん”
それ俺!その若い子に手を出してるおじさん俺!
もうね「ああ、だから急に連絡取れなくなる子とかいるんだな」と、せっかく共感出来る部分を見つけたのに今度は自責と後悔、反省といった感情がうずまき後半はまともにストーリーを追えませんでした。
映画は、面白かったんですよ!
ただ、時々“ピンポイントで観ちゃいけない人がいる映画”もあるんだな、とおもったというお話でした。
黒田勇樹に相談したい方はメールにて相談内容をお送りください。メールには「ニックネーム、性別、年齢、ご相談内容」をご記載ください。メールアドレスは「sodan@tokyoheadline.com」になります。
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。
公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23