風評被害に負けないものづくり。【故郷の誇り胸に、福島が歩んだ10年】
英ナチュラルコスメブランド「LUSH」との冬季限定コラボ商品「Knot Wrap(風呂敷)」
いわき市に暮らす酒井さんは2013年、友人の縁でプロジェクトに入った。もともとファッションが好きだった酒井さんは、収穫した綿花をコットン製品化する商業部門を担当。手ぬぐいやハンドタオルなどの身近な商品を開発し、生産者と消費者の架け橋になった。綿花の栽培は実験の繰り返しだ。実りの数を増やすための「摘心」の作業では、同じアオイ科の作物であるオクラの栽培からヒントを得た。栽培初年度は種付きで100kgしか収穫できなかった綿花は、今では1200kgまで採れるようになった。いわき市に点在する小さな土地でも生産性を確保できるノウハウは大きな進歩だった。プロジェクトは人から人へ輪が広がり、栽培体験のボランティアに訪れる人はこれまでに延べ3万人に上る。
多くの人によって支えられたプロジェクトだったが、酒井さんは次第に「自立」を意識するようになっていた。「補助金がなくても続けていけるようにしたい」オーガニックコットンの可能性を信じていたからこそ、復興とビジネス、両方の視点が必要だと感じた。