「SDGs学習の難しさ」に現れる日本の教育改革の重要性。“解がない”課題に向き合う力を
アウトプットの難しさを感じているという稲田氏から「アウトプットする際の、伝えたいことの整理の仕方を皆さんに伺いたい」とアドバイスを求められると、小宮山氏は「最初から100%完璧に伝えようとしない。試行錯誤を重ねながら30%、40%とだんだん理解を深めてもらうことを目指すといいと思います」。アウトプットを引き出す側でもある堀氏は「僕はアウトプットしやすい環境を作ることを心がけています。明らかに変だなという意見が出ると、あえて口を挟んで、冷笑の空気を断ち切るんです(笑)」と言うとパネラーも共感。朝日教授が「何か質問はと聞いても生徒が誰も声を上げない。堀さんの言う、アウトプットの雰囲気づくりを中学、高校でもやったほうがいいと思いました」と言うと堀氏も「自分の意見を言うことが子供のころから根付いていれば大人になってからも生きやすいのではと思う。困りごとをどんどん発信し、メディアがそれを拡散すると、社会課題をニーズととらえビジネスにつなげる人も出てくる」。
さらに朝日教授が「研究機関として、今どんなテクノロジーがありそれがどんな強みになるか、最先端の現場を子供たちに伝えていくことも大事だと思っています。その知識と、新しいことに挑戦しようというイノベーティブな思考を身につけさせる教育、この2つを融合させることが重要」と話すと、「デロイトデジタルが小学生向けSDGs教材をグローバル科学知融合研究所と作っているのも、そういった背景があってのことなんです。データを使う側の人の価値観や考え方が何より大事なんですよね」。日本の教育が変わるには、との問いに小宮山氏は「まず教育者や親側のマインドセットが必要だと思います。学びのDXととらえて、取り組まないと日本の教育を変えることは難しいのでは」と話した。
それにはテクノロジーの活用も深く関わってくるが、堀氏は「5Gでさえどう生かされているか分からなかったり、日本の子供の7人に1人が貧困状態にあるといわれ当然そういう子はタブレットを持っていない」と格差を懸念し、小宮山氏も「小中学生には一人一台デバイスが支給されることになったが、高校生や教員はどうかと言うと…」と現状を指摘。
朝日教授は、日本の教育現場の課題を変えていくためにも、SDGs学習の重要性を語り「全国各地、格差なく、新たな時代に対応できる人材育成システムを伝えられるように、われわれもこのプロジェクトを通じグローバル科学知融合研究所で取り組んでおり、自治体と連携して実証実験も始めています。企業の方々にも未来への投資として貢献していただけたら」と期待を寄せた。