自主性を重んじるSDGs開発目標で課題となる「意識格差」を作らない人材育成を

所千晴氏、中山泰秀氏

 防衛副大臣兼内閣府副大臣の中山泰秀氏も「次世代への投資をしっかりやりたい。最もポテンシャルを持つ子供たちが、コロナによる分断が無くなった後、どんどん世界に飛び出せるような環境を作りたい。政府が公費で海外での勉強をしてもらい、帰ってきて社会に貢献してもらう。世界に飛び出し、戻ってきて世界の架け橋となる人材の育成に投資していければ、と考えています」と語り、衆参両院で議員を務めた祖父・中山福蔵や、女性初の国務大臣(厚生大臣)として児童扶養手当を制度化した祖母・中山マサ氏をはじめ自身も若くして海外へ渡り、大きな経験を得たことを振り返った。

 

 笹谷氏は、SDGs人材育成において、人や地域で大きな差が出ていることも懸念。「SDGsでは自主性に重きを置いていますが、自主性となると、どんどんやる人とやらなくてもいいととらえる人とで差がついている」と笹谷が話すと、所教授も「さまざまなSDGsの取り組みがあるが、どれだけ奥深く理解されているか。例えば海洋プラスチックの問題なら、どういう物質がどのように使われていて、なぜそれが問題になっているのか、専門的な知見を取り入れながら考える必要があるのでは」と話した。


 堀氏も「先日、ちょうどラジオ番組に小泉進次郎環境大臣に出演していただいたが、スプーンの問題は入り口で、さらにその先が問題なんだと気づいてもらえたら、と言っていました。しかしその先の扉を誰が開けるのか」と問いかけると、中山氏も「政策立案したときの思いが、実際の現場に反映され、結実できるか。そのズレは確かにあると思うし、こういうことをもっと改善していきたい」と話した。


 笹谷氏が「制度設計が難しい時代。ソフトウエア、ハードウエア、に加え“ハートウエア”、ハートに響くかどうか、共感を呼べるかという視点も大事かもしれない。環境に良い製品や仕組みを作ったら、それを使いたいと思うような共感を呼ぶスキームが必要では」と話すと、所氏も「日本の大学は理系と文系ではっきり分かれてしまっているが、この垣根を超えた人材を育成したい。海外でなくとも異分野との交流や、ダイバーシティーの視点など、自分が知る環境とは異なる場に身を置くことで、伝える力が伸びていくと思う」と話した。


 パネラー一同は、異文化体験を通して異なる知識や考えに触れ、自らを客観的に分析し、課題を見つける経験は、SDGs人材育成において重要とし、同時に、自らの強みも客観的にとらえるべき、と話した。