世界をザワつかせた、総制作年数7年! 驚異の“ほぼ1人で作った”ストップモーションアニメ『JUNK HEAD』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。


 舞台『白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます』が28日、無事に全9公演終了いたしました。初めて演出のみで作品にかかわったのですが、改めて「お芝居は楽しい」ということを実感しました。


 この作品は原作の小説があって、コミック化もされていますので、僕のSNSなどを見ている方でちょっとでも興味の持たれた方はぜひそちらも!


 黒田はこれからまた別の作品に取り掛かります。詳細等は改めてお知らせしますので少々お待ちください。


 では今週も始めましょう。



黒田勇樹

 時々、こういうものに出会う。


 長年コツコツと彫り上げられた仏像とか、建築物の様な“念”が込められた作品が「映像」にも、確実に存在している。


 信念なのか執念なのか、ほぼほぼ1人で7年かけて制作されたストップモーションアニメ「JUNK HEAD」を観てきました。


 ストップモーションアニメとは粘土とかマペットとかを、少しづつ動かしながら撮影してつなげていく“コマどり”と呼ばれるアニメーションのこと。最近だと「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」なんかが注目されましたね。今作はなんと約14万コマを撮影。


 シェイプオブウォーターの監督を始め、世界が絶賛したとのこと。


 ストーリーは若干複雑なのですが、見始めてしまえばすんなりと入ってくる“ディストピアもの”


 個性豊かでチャーミングなキャラクターが織りなす、毒を含んだSF作品。


 僕が注目したのは、これも“ほぼ監督1人”で、行われている「アフレコ」


 各キャラクターが、同じくストップモーションアニメの名作「ピングー」とか、スターウォーズの異星人たちの様に「存在しない言語」をしゃべり、そこに字幕が表示される形式なのですが、この架空の言葉による“表現力”が本当に素晴らしい!


 演劇のワークショップなどでも、有効な訓練として行われる「外国語“風”に、存在しない言語を喋る」トレーニング。


「英語風」「ドイツ語風」「中国語風」…と色々やらされて最後に「日本語(自国語)を使わずに“日本語風”の架空の言語で感情を表現する」みたいなのがあるんですが、それが完璧に「この世界の言語」として、実行されている。


「本職は内装業」って人が監督したってだけで驚愕してるのに、演技まで一流レベルのものを持ってくる。


 多分、一般的なアニメに呼んで他の声優さんと比べてしまったら、見劣りならぬ聞き劣りするのかもしれませんが、“この作品の声優をやらせたら世界一”という仕上がり。


 7年とは、全身の細胞が入れ替わるともいわれているほどの膨大な時間、誰かの人生の1部分が強烈に塗り込まれた“人生そのもの”に近い、僕が映画に求めるものが多く描かれた傑作でした。




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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23