「改正健康増進法」施行から1年 喫煙者をめぐる環境はどうなった!?
昨年、新型コロナウイルスが発生してから対人関係の中で最も忌み嫌われてるのが「飛沫」。この飛沫を防止するために今ではほとんどの人がマスクをしている。そのちょっと前までは「受動喫煙」というものが槍玉にあげられて、昨年4月には喫煙環境を著しく制限する「改正健康増進法」という法律が施行されたのだが、皆さん覚えていますか? 新型コロナに頭がいっぱいで忘れちゃってはいませんか? ということであれから1年経って、喫煙者をめぐる環境を探った。
昨年4月に「改正健康増進法」が施行され、この4月で1年が経った。本来なら施行時に各メディアが取り上げるようなトピックスだったのだが、4月7日に新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に発令され、16日には全国に対象が拡大された。
ニュースは新型コロナウイルス一色に染まり、同法によって喫煙環境がどうなるのかといった啓発活動もままならないまま時が経った。そもそも街から人が消え、飲食店も時短営業や休業要請を受けたことから営業する店も少なく、受動喫煙がどうこう言うムードではなかったのも事実。
早くから“3密”が叫ばれたことから屋内外問わず喫煙所が閉鎖されたり、人数制限が設けられたりといった事態となったが、何度も言うが、人自体がいないことからさほど騒ぎにはならなかった。
その後、緊急事態宣言は段階的に解除され、5月25日には最後に残された首都圏1都3県と北海道も解除。全国で解除された。
新型コロナについては熱が37.5度が4日続かないとPCR検査を受けられないといったものを始め、正しくない情報が政府からも発信されるなど混迷を極めたが“3密”がよろしくないということは現在も変わらず新型コロナの感染拡大防止における錦の御門となっている。
そのため緊急事態宣言解除後も、例えば渋谷のスクランブル交差点付近にある喫煙所は閉鎖されたまま。さまざまな施設内の喫煙所も人数制限は継続したまま。そればかりか閉鎖もしくは撤去されたところも多い。
数少ない安心してタバコを吸える場所=喫煙所が減ったことで、またぞろマナーの悪い喫煙者が増え始めている。それは吸ってはいけないところでの喫煙、歩きたばこ、ポイ捨てといった行為。これらの行為は昨年4月まではさまざまな報道や、タバコが吸えなくなる飲食店での店員らとの会話の中で徐々に浸透し、受動喫煙を嫌がる人の権利は元より、喫煙者の権利を守るためにも守らなければいけないこととして広く浸透した。
ところが最近はこれらの行為が以前より目につくようになった。これについては喫煙者側からすると「吸う場所がない」という至極簡単な答えが返ってくる。ある喫煙者に聞くと「屋内で案内板を見て喫煙所に行くと、そこが閉鎖されていて、どこに喫煙所があるのかと思えば外だった。ぐるっと回ってやっとたどり着いたら大勢の人がいて、そこからまた待たされた」とぼやきの声があがった。これは真っ当な意見。
なんともグレーなのが、閉鎖中の屋外喫煙所の外側の壁際でタバコを吸う喫煙者もいる。そういう人たちはたいがい携帯用の灰皿を持ち、マナーはしっかりしているのだが、立っているところは吸ってはダメな場所。本人たちも順法精神は持ち合わせているのだが、喫煙所があるはずのところが来てみたらなくなっている、という状況にやむにやまれずそこで吸うという事態になっている。そういう人たちは「みんなコロナにかかるのは嫌だからちゃんと密にならないようにタバコを吸っているし、そもそも屋外の喫煙所なんだし、早くここで吸えるようにしてほしい」と訴える。
行政も商業施設もそこからクラスターが発生する可能性はゼロではないし、発生した時の世間のバッシングを恐れ、喫煙所の閉鎖や撤去ということを行っているのだろう。
ただし付け加えておくと、喫煙者はさほど減ってはいないのに喫煙所が減れば、数少ない喫煙所では“密”を生み出す可能性もあるし、喫煙者のストレスたるや計り知れないものがあるということから考えるに、速やかな喫煙所の再開が求められる。
また飲食店ではお店側にちょっとしたストレスがかかる問題が発生している。改正健康増進法により、主食を出す飲食店では店内ではタバコが吸えなくなった。
屋外は規制の対象外なので、店の外で吸うのは問題ない。しかしそもそも「受動喫煙を生じさせないように配慮しなければならない」というのが法の精神なわけだから、吸うほうも吸われるほうも気を使う。
あるお店ではタバコを吸いたいというお客に灰皿を渡して外で吸ってもらっているのだが、店の敷地外でタバコを吸うと自治体によっては「路上喫煙」となってしまうなどややこしい。飲食店の入っている建物自体も敷地内なら喫煙OKのところとNGのところがある。
客「えー? 別のお店は吸わせてくれるのに」
店員「うちが入っている建物はダメなんですよ」
こんな会話も実際あるという。長く続く時短営業もあり、体力の弱った飲食店で「ダメ! 絶対」と強く打ち出せるところはどれほどあるだろうか。
こういった話を聞くと先日報道された厚労省の宴会問題を思い出す。あの問題では本来なら19時から21時の予約で閉店時間も21時だったのに、後から後から人が来るためなし崩し的に営業時間を伸ばさざるを得なかったという店側のコメントが報道された。この飲食店における喫煙問題もそれに似てはいないか? 苦渋の決断をせざるを得ない店があることも頭に入れ、喫煙者にはマナーを守った喫煙を、行政や商業施設等はできるだけ喫煙所の開放を望みたい。
最後に「まあ、喫煙所がゼロになっていないだけましかな…」というある喫煙者の言葉を紹介しておく。そこまで喫煙者に対するサービスのハードルを下げなくてもいいのでは…? だって喫煙者の皆さんは1箱540円としてそのうち333.97円くらいはたばこ税(国税・地方税)とたばこ特別税、消費税で持っていかれているのだから。