LGBTQが最も生きづらいのは「職場」。全国5千人の調査で判明。仲間の困り事にどう気づく?

一般社団法人fair 代表理事の松岡宗嗣氏

分かったつもり?認識にもギャップ

 調査では、世間と当事者との認識の差も浮き彫りになった。生まれた時の性別と現在の自分の認識している性別が同一で、恋愛や性的な関心の対象が異性の、いわゆる「ストレート層」のうち、LGBTQ層の悩みを知っていると答えた1331人(29.5%)に悩みの内容を聞くと、「男女分けされている場所の使用」「結婚・パートナーシップ」「カミングアウト」が挙げられたが、当事者が答えた自身の悩みは「差別や偏見」「当事者は周りにいないと思われている」「結婚・パートナーシップ」の順となり、両者の意識にギャップが生じていることがわかった。

 これには「LGBTQという名前は知っていても、身近な範囲での困りごとがなかなか想像できない人が多いのでは」と松岡氏。「周りにはLGBTQがいないと思っている人が多いので、メディアで報道されやすい事、男女分けの仕組みや、パートナーシップなど目に見えやすい課題が認識されて、すぐ隣の人の困りごとを想像できていない現状があるのかなと思う」と指摘した。

職場での「アライ」の重要性

 そうした中で期待されるのが、「アライ」の役割だ。アライとは、仲間や同盟を意味する英単語「Ally」が語源で、一般的にLGBTQへの理解者・支援者を指す。

 杉山氏は「不安を感じることなく働ける“心理的安全性”が大事。いつだって言えるんだという安心感を持って過ごすのと、バレたらどうしようと不安を抱えながら過ごすのでは、全く違う。心理的安全性が保たれていれば、個人としてもチームとしても、パフォーマンスをより発揮できると思う。当事者は“誰に言ったら大丈夫かな”といつも探しているので、ぜひ“ウェルカミングアウト”として、LGBTQの話題をちょっとリツイートするとか、PCのラップトップやスマートフォンにレインボーのシール貼ったりとか、アライであることを目に見える形で表してくれたら、当事者にとっても安心感につながるのでは」と話した。

 松岡氏は「当事者もカミングアウトが難しいときに、最初アライとして参加することがある。それで、ちょっと様子を伺いながら、“実は当事者だったんだ”と、カミングアウトできたりもする。こうしたステップとしてもコミュニティは必要だなと思います」と、アライコミュニティの大切さを伝えた。