岡田監督、MIYAVI、別所哲也…各界のスペシャリストが語るデジタルの“今”「デロイト デジタル ウィーク」
5日目 チームラボ堺氏「体験が変わっているのはもちろん、その体験が気持ちいいことも重要」
最終日となる5日目「Hello New “Business”」のセッション1「teamLab x Deloitte Digitalで考える、新しいエクスペリエンスデザインへの挑戦」は、ゲストに堺大輔氏(チームラボ株式会社取締役)、スピーカーとモデレーターに森亮氏(デロイト トーマツ コンサルティング執行役員、FSIデジタルトランスフォーメーション&イノベーションリーダー)。
「ANAマイレージクラブアプリ」やJR東日本「イノベーション自販機」などを手がけるチームラボ。2010年までを「機能」の時代、2010年以降を「UX(体験)デザイン」の時代と位置づけ、堺氏は「体験を作るということは体験自体が変わっているのはもちろん、人間なのでその体験が気持ちいいことも言葉で推し量れないくらい重要」として「りそなグループアプリ」を例に成功事例を解説した。
スピード感を持ってサービスをローンチするために「日本のデジタル的にアップデートされてないところだと思うんですけど、要件定義の手前の企画構想がとても長い。デジタル的なものの作り方ってアウトプットして、プロトタイピングでも何でもいいので具体的に目に見える形に落とすことが重要。一回目に見えると共通言語ができて、それを見ながら同じ話ができるんです」という堺氏の持論に、森氏も思わず「コンサルティング稼業もやり方を変えていかなければいけませんな」と唸っていた。
セッション3「Global Marketing Trend 2021 ~世界のマーケティングトレンド~」のスピーカーは阿久津聡氏(一橋大学大学院教授、DBAプログラムディレクター)、熊見成浩氏(デロイト トーマツ コンサルティング執行役員)、モデレーターは江連裕子氏(経済キャスター)。
Deloitte Digitalに所属する世界中のコンサルタントの知見を結集した「グローバルマーケティングトレンド2021」から注目すべきトレンドをピックアップ。今回のレポートでアジャイルの重要性が上がってきたといい、熊見氏は「コロナ禍によって、多くのビジネスが予想とまったく違う方向に進んだ際に、組織や戦略を臨機応変に変えていく必要が出てきたのでは」、阿久津氏も「中心はパーパス(存在意義)とヒューマンエクスペリエンス(人としての経験)だが、誰もが想定していなかった事態に迅速に対応しなければいけない中で、今はアジャイルが注目されているのかもしれない」と述べた。
阿久津氏は「企業活動もグローバルソサエティというコミュニティの中で、責任を果たしていくという理念であることがパーパスの大前提」として「お客様にインターネットやSNSからさまざまな情報が入る中で、企業がどういう経緯で商品を提供しているのかが重要になった。たとえば喜ぶ人がいるからといって毛皮のコートを作っていいのか、あるいは労働条件でも一番安く作ってくれる人に作ってもらえばいいのかということが、単純に受け入れられる状態ではなくなった。世の中で改めてパーパスという言葉が議論されているのにはそういう背景がある」と言及した。
さらに注目しているキーワードは「共感」だといい「デジタルのコミュニケーションの中でも共感が担保されるのはすごく大事なこと。オンラインを介してお客様とやり取りする時に、面と向かってやり取りしているのと同じような共感が担保できるのかが課題になる。マーケターには2つの役割があって、お客様のニーズに共感してサービスを考えることと、自分たちが提供するものをお客様に共感してもらうこと」と阿久津氏。そのうえで心理セラピーを例にしたオンラインでのコミュニケーションにおける共感と、組織的共感コミュニケーションモデルを解説し、現在開発中の共感モニタリンングサービスにも触れるなど、デジタルと人間らしさの融合を目指す5日間の締めくくりに相応しい内容の濃いセッションとなった。