【インタビュー】TOSHIO MATSUMOTO | MATSU BOCCH 07 -MEDAL RUSH- ーー月刊EXILE

SC_photography_Kei Ogata(No.2) styling_Yoshiyuki Shimazu(OTA OFFICE) hair&make_Hirokazu Niwa(maroonbrand) art direction&design_Takuya Nakashiro(BUCCI for Golfickers) text Masako Wakamatsu edit Megumi Shishido

2020年、コロナ禍で延期を余儀なくされた「松本利夫ワンマンSHOW MATSUぼっち07」-MEDAL RUSH-」が、6月2日より上演される。スポーツの祭典、地下世界、AI・本作に関連するキーワードから連想される世界観で紡いだストーリーをお届けするとともに、松本利夫に本作にかける想いを聞いた。

─昨年、コロナの影響で延期となった『「MATSUぼっち07」-MEDAL RUSH-』がついに上演されることになりました。今の率直なお気持ちを聞かせてください。

「毎年ライフワーク的にやらせてもらっている公演だったので、延期が決まったときは落ち込みました。だから、今年こうして開催させていただくことになったのはうれしいです。一年充電したぶん、今回の公演にぶつけていこうという想いです」

─「MATSUぼっち」をはじめさまざまな活動が制限された2020年はMATSUさんにとってどんな一年でしたか?

「日本中、世界中の皆さんが同じ状況、環境のなかで“今は我慢”という風潮が流れていたじゃないですか。そのなかで僕自身もルールを作り、そのルールのもと、できることを精いっぱいやっていくという一年でした。あと、自粛期間中は家にこもる時間が増えたので、家族の絆が深くなって。考える時間もたっぷりあったので、マイナスの部分をいかにプラスに変えていくかということを心がけていました」

─心に穴が空いたような状態にはならなかったですか?

「ならなかったです。僕の場合、そばで支えてくれる妻と子どもがいるというありがたい環境だから寂しくはなくて。まぁ、そのぶん子育てが大変だったりはしますけど(笑)。初めての経験をしているのはみんな同じ。そこをわかったうえで次の準備をしていこうという感じでしたね」

─休みながらも完全にオフにはしなかったと。

「僕、コロナに関係なく完全にオフになることがないんです。家にいても旅行に行っても、海外で海を見てぼーっとしていても、どこかしらで仕事のことを考えているので」

─頭が空っぽになることがない?

「ないです。この仕事を始めてからずっとそうだし、それが苦じゃない。好きな仕事のことを考えているから、“休まらないな”って思うことがないんです。あとはもしかしたらどこかに恐怖心があるのかもしれない。一回オフにしちゃうと、次にスイッチを入れるのが大変になりそうで、基本的には寝ている間も仕事のことを考えています。ショートスリーパーですしね」

─じゃあ、毎日の睡眠時間は5時間ぐらいですか?

「5時間寝られたらいいほうじゃないですか。今みたいに稽古中は4〜5時間が普通。じゃないと時間が足りないんです。家に帰ると子どもの世話をして寝かしつけてシャワーを浴び、そこから台本を覚えるとなるとだいたい寝るのは夜中の3時前後。で、朝は朝で6時から7時の間に子どもに起こされますから、睡眠時間3〜4時間の癖がついちゃったんですよね。そういう生活がずっと続いていて、しかも僕は稽古嫌いだから稽古期間中は結構辛い。でもそれをあえて求めに行って、辛いことを楽しんでいる自分もいるんです(笑)」

─以前、「メンタルはM」とおっしゃっていましたね(笑)。

「辛ければ辛いほど、マインド的には調子がいい。常に追い込まれたいんでしょうね。でも実際はイヤなんですよ? 本当に辛くてキツいんだけど、追い込んだときのほうが集中できるしいい作品になるし、満足感も達成感も得られる。で、終わったあとには“やっぱり追い込んでよかった”って思うんです。逆に追い込んでいないときは達成感が薄い。さらっと終わった感じで自分のなかでもあまり残らないから、追い込む形を自ら作っているのかもしれない。だからいい意味でいつも憂鬱です(笑)」

─「いい意味で憂鬱」って(笑)。

「やっぱり、さっき言ったような一日のスケジュールを考えると大変じゃないですか。日中はずっと稽古して、帰ったら子どもの世話をして寝るのは夜中で、そんな日が続くのかと思うと憂鬱にもなる。でもイヤな憂鬱じゃない。自分的には暇で不安になるのがいちばんネガティブな状態なので、忙しくてブツブツ文句言ってるときの憂鬱はプラス。いい方向の憂鬱なんです」

─暇だと調子を崩すタイプの方っていますよね。それって体質なのかもしれない。

「普通は暇なほうがいいはずなんですけどね。身体を休められるし、遊びに行けるし、やりたいこともできるし。でも、自分は好きな仕事をやっているから苦じゃないんだなって思う……と言いながら、本当に好きなことをしているのかどうか僕自身、明確にはわかっていないんですけど」

─そうなんですか?

「自覚的に“この仕事が好きだからやる”というより、やりたくないことはいつの間にかやらなくなっている感じですかね。興味のないことは、気付いたら「あれ? 最近やっていないわ」って。やりたくないことは続かないから、結果的に好きなものだけ残る。そうやって本能的に選んでいる気がします」

─それ、MATSUさんの年齢不相応すぎるヴィジュアルや佇まいを見ているとわかります。好きなことに打ち込んでいる人って年齢を超越している人が多いじゃないですか。

「そうなんですかね?(笑)そう言っていただけるとうれしいけど、僕は衰える自分が嫌なんです。ナルシストなのかもしれないけど、肉体も含めて衰えていく感覚が嫌というか。若い子のように流行りものを常に追いかけている感覚には乗れなくても、自分なりに追い求めているものに対して走り続けていたい。そのペースが落ちて歩く速度になってしまうと自分自身が辛くなってくるんです」

─実際、2021年は3〜4月にミュージカル『INTERVIEW〜お願い、誰か僕を助けて〜』にも挑戦し、走りっぱなしですよね。公演前のインタビューでは「自信がない」発言を連発していましたが(笑)、無事終えた感想は?

「いやぁ、自分のなかで3本の指に入るほど辛い作品でした(笑)」

─やはり歌唱が大変だったんですか?

「歌もそうだし、1時間50分を3人で回すのでセリフ量がすごい。物語もすごく深みがあるから、毎回やるたびにメンタルも深いとこまで行ってしまうんです。でもその深さまで感情を持っていかないとセリフが入ってこないし、この作品のすごいところは台本を読んでいるだけで自然と深いとこに持っていかれるところ。セリフを覚える程度にサラッと読むだけでもグワーッと入っていって、取り組んでいる間は日常に戻ってもその感覚が抜けないから結構ヘビーでした。決して明るい話ではないので常に気持ちが重苦しくて、公演を観てくださった方に『あの芝居をやるのは大変だね』と言われましたけど、舞台を下りてもそれがずっと続いている状態。ここまで役が抜けなかったのは初めてかもしれないです。さらにそんな状態のなかで初めての歌唱があり、そこに自分の実力が追いつかない葛藤や不安、悩みもあって……。でも、このときも不思議とそれを嫌がっていない自分がいたんですよね」

─やっぱり生粋のMですね(笑)。

「辛い、苦しいっていうのを実は楽しんでいました(笑)」

─そして、そんな『INTERVIEW〜』のあとの『「MATSUぼっち07」-MEDAL RUSH-』。稽古の様子はいかがですか?

「今日でまだ3日目なので(インタビューは5月上旬)、どんな感じになるのか正直まだつかめていないです。でも演出は前から一緒にやっている徳尾(浩司)さんですし、スタッフも同じなので2年半ぶりという感じはしない。知っているもの同士、和気藹々と楽しんでいる感触もあって、それこそ『INTERVIEW〜』の稽古場とはまったく違いますね。あのときは毎回戦場に行くような感じで、スタジオの扉がガッシャーンと閉まると、『今日も逃げられないな……』って牢獄に閉じ込められたような気持ちになっていましたから(笑)。ただ、こっち(『MATSUぼっち』)はこっちで自分の名前が入っている作品なので、大変といえば大変です。毎回、真剣に遊び、お客さんにも楽しんでもらうことをテーマにしているので、遊んでいるけど全力です」

─地下世界やAIが出てくるストーリーで、今回も荒唐無稽な内容になりそうですね。

「今回はスポーツの祭典をテーマにしています。前回の『MATSUぼっち06』-STARS-が宇宙の話で銀河まで行っちゃったから、次はどうしようかなと。今度は逆に小さくしてミクロの世界とかいろいろ考えましたが、最終的には地底の世界になりました。で、その地底世界で架空のスポーツの祭典があって、地底人と地上人が戦うというストーリーになっています」

─恒例の無茶振りもあるんですか?

「スポーツと言っても地底世界の架空の競技なので無茶振りもありますし、単に自分たちが楽しんでいるだけじゃんっていうのもあります(笑)。ただ、『MATSUぼっち05』-レコード-とかは練習しないとできないことがめちゃくちゃ多かったけど、今回はそこまで練習が必要なのは2個ぐらいですかね」

─演出の徳尾さんが別のインタビューで、「MATSUさんはできないこともやってしまう人。乗り越え方がすごい」と言っているのを読みました。しかもMATSUさんはそれをイメージトレーニングで習得するというのも驚きました。

「“これをこうしてこうなりたい”ってイメージができると、やることが明確になるじゃないですか。そこから成功の形、失敗の形も見えてくるという感じ。でも、失敗したとしてもそれは本当の失敗ではなくて、見せ方としてOKというところまで持っていかないといけない。特に一発勝負のときは、ワーッと盛り上がる成功シーンをイメージすると同時に、失敗したとき用の盛り上がり方もイメージするので、両方のパターンを常に考えてやっていくんです。そういったところを踏まえて、今回はどんな演目にしようか一個一個決めているんですけど、今はまだやってみてどうなのか試している段階。出した案を実際にやってみて、盛り上がるのかなとかこれは違うなとか稽古しながら探っています。実際やるとできないものもあるし、意外とできちゃうものもあって、実践してみないとわからないことも多い。ただ、できないときのほうが見え方としてはおもしろいんです。すんなりできちゃうと当たり前のように見えちゃうから、『さすがにそれは難しいよね』と伝わるように見せないといけないっていう」

─本当はできちゃうけど、できないように見せることはしたくない?

「それをやってもたぶんバレます。毎公演来てくださっているファンの方はちょっとした動きもすぐわかるというか、ホントお母さんみたいな感じで(笑)。一瞬のミスも見逃さないし、目の奥、心の奥まで見てくれる。そうなってくるとごまかせないですから、舞台の上では嘘をつかないようにしています」

─脇を固める「ぼっち軍団」(サポートメンバー)との絡みはいかがですか?

「今回は全員、以前の舞台でも出てもらったメンバーなので、入りのときからイメージが見えてやりやすいです。初めましての人だと稽古以前に慣れるまでが実は大変で、さらにそこから演出をしたり芝居の稽古をするのって難しいんです。特にこういうコメディはおもしろくしなきゃいけないから、真剣だけどまじめにやりすぎてもいけない。その塩梅や温度感を一から伝えるのってすごく難しいんですよね」

─そもそも温度感って言葉ではなく感覚でつかむものですからね。

「そう。僕自身、これがなんでおもしろいのかとか、この“間”がなんで必要なのかと聞かれても答えられない。でも、今回みたいに全員知っているメンバーだとニュアンスがわかっていて説明しなくても伝わるから、すごくやりやすいです。稽古の雰囲気もいいので楽しみにしていてもらいたいです」

─期待しています。ちなみに、この7月号が発売される5月27日はMATSUさんの46歳のお誕生日。46歳に向けての抱負はありますか?

「僕、いつも年の頭に一年のテーマを考えるんですけど、いつも一緒でやっぱり“継続”なんですよね。続けることの難しさ、大変さを実感しているし、でも続けることによって自分のモチベーションが保てる。やり続けていれば負けないというか。諦めてやめた瞬間、自分のなかで負けてしまうと思っているんです。だから『継続は力なり』というテーマはEXILEに入った当初からずっと変わらないんですよね」

─実際、それを実践されていますし。

「いや、まだまだこれからです。と言っても46歳だと寿命が80歳と考えると、あと34年しかない。つまり34回しか桜を見られないことになるじゃないですか。そうやって逆算して考えると時間って少なくて。毎年見られるから当たり前になっているけど、回数にするとカウントダウンが始まっちゃうんですよね。なので一日一日、瞬間瞬間を大事にしていこうと思う。そういうことを考え始めたのは子どもが生まれてからで、あっという間に成長して気付いたらもう5歳。え? あと少しで小学生で、ランドセルとか考えるの? みたいな(笑)。子どもの成長はすごいスピード感だから、時間の流れをいやでもリアルに感じるんです」

─今の状況下で聞くとより響く言葉です。

「そうですよね。『時は金なり』じゃないけど、毎日を大切に生きようと心がけています」

─では最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

「今は劇場に来たくても来られない方もいらっしゃると思いますが、僕もサポートメンバーも万全の対策を取り、そのうえで公演に挑むつもりです。これまでは客席に下りてお客さんと一緒に写真を撮ったり、演者とお客さんがめちゃくちゃになりながら楽しむ公演でしたが、今回はそういうことができない。とはいえ、やっぱり来てよかったと、待った甲斐があったと思っていただけるものにしたいと思っているので、ぜひ劇場まで生の芝居を観に来てください」

─やはり、生の舞台にこだわりたい?

「最近、改めて生っていいなって思うんです。この前も初めてバスケの試合を観に行ったんですが、生でスポーツを観られるのはいいですね。シュートが入った瞬間、みんながパッと立ち上がって歓声を上げる、その一体感はやっぱりたまらない。そういう感動の瞬間や心を動かされる感覚を、その場に足を運んで味わうことが新たな未来の作り方なのかなと感じたんです。だから“今は我慢”とは思わず、逆にこの状況が当たり前で、そこでできることを最大限にやっていくことが重要なんじゃないかなって。その当たり前のなかで、どうやってよりよく生きていけるか見つけていくことが必要だと思うんです。だから立ち止まって待っていちゃダメ。これからも走っていくつもりです」

 

 

月刊EXILE ( http://www.exilemagazine.jp/ )7月号より

 

STAGE information
松本利夫ワンマンSHOW『MATSUぼっち07』-MEDAL RUSH-
[東京公演] 日程/6月2日(水)~6月6日(日)会場/品川プリンスホテル クラブeX
[大阪公演] 日程/6月11日(金)~6月13日(日)会場/松下IMPホール
[香川公演] 日程/6月26日(土)会場/レクザムホール(香川県県民ホール)・小ホール

2021年。東京で世界的なスポーツの祭典が盛大に行われているころ、とある地下世界では、AIたちが密かに地球転覆を狙ったプログラムを実行させようとしていた。そのことに気付いた松本利夫は、危険を顧みずに巨大な地下要塞に潜入し、プログラムを止めるために必要なメダルを集めようとするのだが……。

EXILE イズムに貫かれた総合エンタテイメント・マガジン
月刊EXILE 7月号発売中!


最新号のカバーはFANTASTICS from EXILE TRIBE。グループ8枚目となるシングル『STOP FOR NOTHING』をリリースした彼らが楽曲やプロジェクトに対する思いを語る! 松本利夫のほか、6月11日に最新シングル『konomama』をリリースするDOBERMAN INFINITYなどインタビューも満載。EXILE ÜSA 、MAKIDAI、橘ケンチ、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHI、世界、佐藤大樹、佐野玲於ら豪華メンバーによる連載も!