新型コロナ感染や後遺症に有効なアミノ酸「5-ALA」とは。論文発表の長崎大・北教授に聞く
感染抑制のメカニズム
―もともとマラリア研究から見出したものだったのですね。では具体的に、感染を抑制するメカニズムはどのようなものでしょうか。
北:5-ALAが新型コロナウイルスを抑制すると考えられる理由は、4つあります。ひとつは、感染のきっかけとなる「スパイクタンパク質」への作用です。ウイルスには、表面にキノコのような突起「スパイクタンパク質」が付いているのですが、ここに5-ALAから生成される「ヘム」や「プロトポルフィリン」が結合するという予測や論文が、海外の大学から発表されていました。このヘムやプロトポルフィリンがスパイクタンパク質の表面をふさぐことで、ウイルスが侵入するきっかけとなる、ヒトの「受容体」への結合を防ぐということです。
さらに、ウイルスが受容体を通過してヒトの身体に侵入したとしても、先ほどお話した「G4構造」にヘムやプロトポルフィリンが結合して、G4構造の生理的な機能を阻害して、ウイルスの増殖を抑えるということが挙げられます。これら2つのメカニズムは、5-ALAから産生されたものが直接ウイルスに作用するものです。
3つ目として、5-ALAには抗炎症作用があることも分かっています。5-ALAから生成されるヘムが増えてくると、それを分解する「系」が誘導されます。これには抗炎症作用があることから、たとえば、重症患者に起こる、免疫の暴走「サイトカインストーム」を抑えることが期待されています。
4つ目として、後遺症にも効果があるのではとの見方もあります。たとえば、肺機能に炎症が残り、治った後も呼吸するのが苦しいという方が一定程度いらっしゃいます。先ほどもお伝えした通り、5-ALAには抗炎症作用がありますので、炎症の進行を抑えることができますし、炎症そのものを抑えることも期待されます。また、5-ALAは細胞のエネルギー源となる「ミトコンドリア」を活性化する作用がありますので、体力の向上やメンタル面の改善にもつながるかと思います。以上のように、直接作用が2つ、ホストへの作用、後遺症への作用の4つがメカニズムとして挙げられます。