新型コロナ感染や後遺症に有効なアミノ酸「5-ALA」とは。論文発表の長崎大・北教授に聞く
―5-ALAはアミノの一種とのことですが、その他のアミノ酸ではダメなのでしょうか。
北:そうですね。5-ALAから生成されるヘムやプロトポルフィリンは、その他のアミノ酸からは生成されません。メカニズムでも説明したように、5-ALAそのものというより、そこから生成されるヘムやプロトポルフィリンにウイルスの増殖を抑制する効果があるため、その2つなしには抑制効果は得られません。
興味深いことに、ヘムやプロトポルフィリン自体は、細胞の中に入りにくいのですね。ですから、これらをいくら外から摂取しても、細胞の奥には届かないのです。5-ALAは我々がもともと持っているアミノ酸であり、細胞の中まで届きやすい点がメリットです。つまり、5-ALAが我々の細胞に浸透して、その力を使って生み出されるヘムやプロトポルフィリンが大事ということになります。摂取しすぎてもすぐに尿で排泄されるので、体内に残ることで副作用が起こる心配が少ないのも5-ALAの特徴かと思います。
変異株への効果
―変異株に対する研究も進んでいるのでしょうか。
北:はい。試験管の中では、すでに実験が進んでおり、いくつかの有望な結果が出ています。変異株はつまり、「スパイクタンパク質の変異」なのですね。原理的には、メカニズムで申し上げた通り、どの変異株でもG4構造は変わらないため、たとえスパイクタンパク質の変異があったとしても、G4構造への作用は阻害することができると考えています。ただ、変異株が感染力が強いと言われるのは、受容体への相互作用が強いため、という側面があります。そうした感染力に打ち勝つだけの、G4構造への阻害ができるかというのが鍵になります。
―5-ALAの摂取をする人が気をつけることはありますか。
北:難病に指定されている「ポルフィリン症」という、ヘムの産生に関わる酵素が欠けていることによって生じる疾患があります。ポルフィリン症は、遺伝性であることが多く、ポルフィリン体あるいはその関連物質が、皮膚、血液、肝臓その他の臓器に蓄積して生じる複数の病気の総称です。これらのうち、皮膚の症状を主に生じるものを、「皮膚型ポルフィリン症」、腹痛、運動麻痺など急性の症状を合併するものを「急性型ポルフィリン症」と呼びます。日本では2011年時点で63例と少ない症例数で、今までサプリメントなどを飲んで副作用を起こしたという例はありませんが、こうした方々は症状悪化の恐れがあるため、念のため注意が必要です。市販のサプリメントなどでも禁忌が記されているかと思います。