歌人・俵万智、初の本格個展『#たったひとつの「いいね」』角川武蔵野ミュージアムでスタート
会場中央の回廊エリアには、平成の30年間の歌業から100首を厳選。大きな柱にはこの年代の俵を象徴する4首、天井からは『かぜのてのひら』『チョコレート革命』『プーさんの鼻』『オレがマリオ』収録の短歌をそれぞれプリントしたアクリル板が展示され、床面には俵の個人のあゆみと社会史を追った年表がある。
会場奥の『未来のサイズ』エリアでは、最新歌集『未来のサイズ』から180首を紹介。「子育てから未来を」「日常から人生を」「地方から社会を」の3つのコーナーで構成し、天井に浮かぶ「空気の器」にも短歌が書かれており、家型のオブジェの向こうには俵が沖縄県石垣島在住時代に住んでいたマンションの屋上で撮影した風景が実際の時間に合わせて流れる。
内覧会には俵本人も登場し、「私も今日初めて展示を見まして、それまで短歌を展示するというのがどういうことなのか想像がつかなかったのですが、普段は歌集の中にいる歌たちがそこを飛び出して、会場の中でいきいきと、のびのびと遊んでいるという印象を受けました。あの空間で、読者の人との新しい出会いを心待ちにしているように見えて、作者としてはとてもうれしいこと」と感想を述べ、迢空賞の受賞について「入り口のところに過去の迢空賞・蛇笏賞の受賞歌集がずらっと並んでいて、この歌集に連なる一冊に自分のものを選んでもらえたことに感激しました。本当に大きな花束をもらったような気持ち」と喜びをコメントした。
この夏は「気に入ったところで立ち止まって、歌と過ごす時間を持ってもらえたら」という俵の言葉の世界に浸ってみては? 「俵万智展 #たったひとつの「いいね」 『サラダ記念日』から『未来のサイズ』まで」は「角川武蔵野ミュージアム」エディット&アートギャラリーにて11月7日まで。