「過去や未来の話をしても現在からは誰も逃げられない」 豊田利晃&窪塚洋介が『全員切腹』で問いかける、生き方の美学〈後編〉

『全員切腹』で窪塚が演じた雷漢吉右衛門(©︎豊田組)

豊田「1本1本は別の作品だけど、“命の話”としてつながっている、『火の鳥』のようにできたらいい」

 ところで、本作を狼蘇山3部作の完結編と位置付けたのはもともとの構想ですか?

豊田「3本目だから、“3部作って言っといたほうがいいんじゃないですか?”って、隊長から言われまして」

窪塚「ふふふ」

豊田「確かにそのほうが分かりやすいし、次が撮れるか分からないから、いったんここで思いっきりやろうかっていう気持ちでした。ただまあ、また来年なのか、再来年なのか、続いていくんだろうなと思っています」

窪塚「未来編がないとね」

豊田「それに、撮影地の神社の宮司さんから“来年もよろしく”って言われたし(笑)」

窪塚「祭りだと思ってるんでしょうね(笑)」

 ライフワークですね。未来編は、全員切腹の続編になるのでしょうか?

豊田「いや、ここまでの3作もそうなんですが、作品としては1本1本で独立した物語だけれど、“命の話”としてつながっているという感じです。僕、手塚治虫の『火の鳥』がすごく好きで。あれは漫画ですけど、ああいう形の作り方はすごく羨ましいと思っています。そういうものが自分でもできたらいいなって、『全員切腹』を撮ってから気づきました」

窪塚「ちなみに『全員切腹』がエピソード・ゼロ的な立ち位置にあって、この、雷漢の切腹を介錯した渋川くんの役が、次の『狼煙が呼ぶ』になるんですか? で、その後に『破壊の日』ですよね?」

豊田「そう。順序的にはね」

窪塚「というのも、俺、この映画の最後(のセリフで)“……蘇って獣になるぜ……”って言ってるんですけど。『破壊の日』に得体の知れない怪物みたいなのが出てくるじゃないですか。『破壊の日』には自分も出演しているので、そっち(自分が演じる役)に蘇ったのだと思っていたんですが、よくよく考えたら、あっち(怪物)なんじゃないか?って。あっちだったらどうしよう……」

豊田「着ぐるみ、用意しておきます」

窪塚「CGでやってください!」

(取材と文・ユカワユウコ)

『全員切腹』
物語の舞台は明治初期。ある流れ者の浪人の侍が、「井戸に毒を撒いて疫病を広めた罪」で切腹を命じられるのだが……。
監督・脚本・企画・プロデューサー:豊田利晃
出演:窪塚洋介、渋川清彦、芋生悠、ユキリョウイチ、飯田団紅
音楽:切腹ピストルズ 中込健太(鼓童)、住吉佑太(鼓童)、照井利幸、中村達也、ヤマジカズヒデ、Mars89/26分/2021年/ユーロスペースほか全国順次公開中 https://www.toyodafilms.net
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