線虫がん検査「N-NOSE」膵臓がんの早期発見に期待 今後はがん種特定検査の実用化目指す
最新の人口動態調査によると、肺がん・大腸がん・胃がんに続いてがん死亡数で4位となる「膵臓がん(膵がん)」。がんが発生しても症状が出にくく、早期の発見は簡単ではないという膵臓がんに対し、「がんのにおい」に反応する線虫の嗅覚をセンサーにした検査法が有用な可能性が明らかになった。
線虫がん検査「N-NOSE(エヌノーズ)」の技術を有する株式会社HIROTSUバイオサイエンスと、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授らの研究グループが共同研究を行った結果、膵臓がん患者と健常者で線虫の走性行動を解析して有意差があることが見出された。研究成果は米科学誌「Oncotarget」(オンライン)に公開され、都内で6日、HIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮代表取締役と大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授が記者発表を行った。
石井特任教授は「膵臓がんは非常に予後が悪いがんの代表格。見つかった時に早期であることはなかなかなく、ほとんどの場合は進行がんになっていることが多い。しかしながら早期で膵臓がんを見つけると、統計的に見ても予後は他の進行がんに比べると比較的良く、やはり早期の段階で見つける技術の開発が非常に重要」と語った。現在は超音波やCTなどの画像診断、CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーでの診断に保険診療が適用されているが、今回の診断方法はこれらとは違うまったく新しいアプローチとなる。
「N-NOSE」は線虫の嗅覚シグナルの行動応答を活用し、寒天プレートの中央に線虫、片側に採取した尿を置き、線虫がどちら側に動くのかによってがんの可能性を調べるもの。現在は診断自体が自動化されており、精度の高いデータが蓄積されるという。
「今回発表するのはヒトの尿を用いて線虫による診断を行い、手術を行う前と行った後で『N-NOSE』のインデックスがどれくらい変わるかを示したデータで、手術後において(数値が)下がっていることが分かります。膵臓がんのステージ別で見たものでも、早期、進行期でも一様に下がっていることから、線虫による診断法が重要であると示唆される」と石井特任教授。早期膵臓がんでのブラインドテストでもやはりインデックスが下がっており、統計的にも全膵臓がんで80%程度、早期で60%程度の感度が示された。これは従来行われているCEAやCA19-9での診断よりも格段に良い感度だという。