「推し活女子」の恋愛逃避と「恋愛依存女子」の泥臭い性愛のコントラスト 内田理央主演『来世ではちゃんとします2』第6話〈ドラマでしゃべりたい〉

 内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京、毎週水曜深夜0時40分)。9月15日放送された第6話では、太田莉菜演じる恋愛絶食系女子の梅ちゃんにとある災難が訪れた。その裏では、内田理央演じる主人公の桃ちゃんと、小関裕太演じる同僚の松田君との淡い恋が芽生える様子も描かれた。

イラスト・ミクニシオリ

恋愛絶食系女子が楽しむ”推し”との都合のいい疑似恋愛

 第6話にしてやっとスポットライトが当たった梅ちゃんは、桃ちゃんや松田君たちと同じ、デザイン制作事務所で働く同僚だ。すらっとしたモデル体型で、少しボーイッシュな服装でジェンダーレスな空気をまとっている梅ちゃんは、実は人生で恋人を作ったことがない、恋愛絶食系女子なのである。

 BL好きで腐女子でもある梅ちゃんの趣味は創作活動で、二次元にいわゆる「推し」がいる。推しに対しては圧倒的な愛を持っており、好きな二次元キャラの話になると、興味がなさそうな桃ちゃんに対してでも好きポイントを早口で語り、止まらない。第6話でも、代休で得た連休を使ってヲタ活の旅に出る中で、とある災難に巻き込まれてしまうが……どんな災難にぶち当たっても、またリアルの男性に好意を抱かれようとも、最後は全て「推し、BL、萌え」のどれかに結びつけてしまう。

 外見の雰囲気的にも劇中の振る舞い的にも、恋愛の機会が全くないというわけではなさそうな梅ちゃん。しかし彼女は自ら、恋愛とは距離を取りながら生きてきたのだ。第6話でも、取引先のきらきら男子に絡まれるが、出会いのない日常の中でのせっかくの機会にも関わらず「だりぃ〜〜」と心から面倒がる。それどころか、自分に好意を持っていそうな男性を目の前にしても、自分ではなく他の男性との「BLカップリング」を妄想しはじめる始末だ。

 恋愛的な「キュン」はBLで妄想し、自身は常に当事者からはずれようとする梅ちゃん。しかし現代、梅ちゃんのような恋愛絶食系女子の数はどんどん増えていっているようにも思う。SNSを見れば、女子の「ヲタ活クラスタアカウント」が推しにお金を大量投下する様子や、現実にはいなくても誕生日会をヲタク同士で開くといった様子の投稿をたくさん目にする。筆者も若い女性に対して恋愛に関する取材を行ったことが数度あるが「推しがいるので、リアルの彼氏はいなくても大丈夫」という意見は予想以上に多かった。

 景気もいまいちで少子化も晩婚化も進み、恋愛に対するハードルもどんどん高くなっている現代、2次元〜2.5次元的な疑似恋愛コンテンツはどんどん数を増えている。スマホで簡単にできるリアルイベントとクロスメディアされた恋愛ゲーム、お金をかければ接触しにいけるアイドルやホストなどコンテンツは星の数ほどあり、SNSの普及で仲間を探しやすくなっているので一緒に盛り上がる仲間も探しやすい。

 2次元コンテンツや2.5次元的人物は、お金さえかければ自分に恋愛っぽい「キュン」を簡単に提供してくれる。恋愛しづらい世の中で、人間関係に悩むことなく擬似的に恋愛を楽しむことさえできれば、そっちの方が楽しいでしょ、と考える若者が少なくはないのである。

 梅ちゃんも完全に、そんな推し活の甘美な夢に酔いしれている。このまま30〜40代以降まで、推し活を糧に生きて、推し活に死んでいく人もいるのかもしれない。一方で、結婚とともにヲタ活からドロップアウトしていく仲間が増えた時に寂しさに気づき、30代以降の「ヲタク婚活」を取り上げるエッセイ漫画なども増えている。さて、梅ちゃんの5年後はどっちなのだろう。

 

リアルの世界で恋愛する桃ちゃんも大変そう…?

 梅ちゃんが疑似恋愛を楽しみながら実際の恋愛から逃避している一方で、主人公桃ちゃんは今回も泥臭い人間関係の中で恋愛続行中だ。第5話では、桃ちゃんとその同僚・松田君の距離が急激に縮まった。松田君のウソか本当か分からないような急な告白を受けた桃ちゃんだが、その圧倒的恋愛経験の多さから防衛本能が働いてしまい、とっさにグレーなお返事をしてしまったう。

 桃ちゃんと松田くんは同僚同士なので、このままうまくいけば禁断の職場恋愛ということになる。バレちゃいたいけど、バレちゃまずい……そんなギリギリの均衡にご満悦の桃ちゃんだが、忘れようと心に誓ったはずの本命にもどっちつかずとも取れる態度を取ってしまい、松田君との恋路にも暗雲が立ち込める。

 恋愛絶食女子梅ちゃんと比べると、恋愛依存女子桃ちゃんは恋愛のせいで毎日が山あり谷ありだ。恋愛でストレスを感じることはなく、始まる前から予防線張りまくりの梅ちゃんと比べれば、日替わりセフレと職場恋愛である意味リア充とも言えるが、それなりの頻度で泣きもみている。

 梅ちゃんと桃ちゃん、どちらの方が幸せということもないが、両極端すぎる2人を見ていると、どちらもいい塩梅に落とし込んでいってくれたら……と願わずには言われない。

 梅ちゃんはともかく、絶賛右往左往中の桃ちゃんの恋路はどうなるのか……。本命セフレA君を演じる塩野瑛久も、松田君を演じる小関裕太も、方向の違うイケメンだ。来週はこの2人に挟まれる桃ちゃんということで、目の保養になる回になる予感。

 

(イラストと文・ミクニシオリ)

1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。
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