睡眠医学のけん引者・西野精治×健康経営研究会理事・岡田邦夫 ロングインタビュー 労働者の健康は会社が守る! 健康と睡眠を経営から変革する
人財に対する正しい倫理を経営者に、睡眠に関する正しい知識を労働者に
――現在、労働者の睡眠事情の中で最も重視すべき問題点はなんだと考えますか。
西野:睡眠はどんなことにも影響を受けるので、一つの要因に決め込むのはむしろ危険です。室温、湿度、寝具、心配事、身体の疾患……その日の状況により、様々に異なってくるでしょう。でも毎日のことですから、快適な室温や湿度をコントロールすることなど、少しの工夫で改善するならやってみるべきです。分かってないことも多いですが、専門家なら「正しいこと、正しくないこと」と「分かっていること、分かっていないこと」の区別はつきますから、私たち専門家の知見で人々の睡眠と生活がよりよいものに向かっていけばいいなと思っています。
――良質な睡眠を得るために、無理なく工夫できることとはなんなのでしょうか。
西野:まず、体温のコントロールが重要です。そうなると生活リズムも関係してきます。このような、睡眠に関する正しい知識を持つことと、改善したいというモチベーションが大切ですね。また、個人差も非常に大きいので、人に強要しないことも大切です。一般にいいとされていても、個人や状況によって合う、合わないがあるので、自分の生活に向き合いながら、自分に合った方法を模索し、自分にとって良い習慣を継続していくことが重要です。
――健康経営研究会としての、今後のビジョンを教えてください。
岡田:今年は健康経営に関する方針を再定義し、倫理観を持った経営者を作ることをビジョンとしています。哲学者マルクス・ガブリエルが唱える”倫理資本主義論”によると、このままIT化が進んでいっても、使えない人はクビにすればいいという考えで、社会や企業は成り立たないと唱えています。企業の財産である人財に対する考え方がおろそかで、この世界と構築している”人”を無視する企業は成功しない、と。そういう倫理観を持つ経営者に対する啓発を広めることが、健康経営研究会の今後の課題です。
睡眠に関する問題を取っても、企業にとって労働者の睡眠改善に取り組むことは、とても有益です。今後、睡眠が健康経営の重要項目となる可能性は遠くないでしょう。
(取材と文・ミクニシオリ)