がん検査のゲームチェンジャー目指す「線虫」。開発経緯と予防医療の未来を聞く

(撮影・蔦野裕)

 そこで線虫嗅覚を研究していた実績から、早期がんの発見に寄与する線虫がん検査開発に乗り出した。線虫はライフサイクルが短く、飼育が容易であること、また地球上でもっとも優れた嗅覚を持つ生物で、早期がんに対する感度が86%以上あることが証明されるなど、がん検査として高いポテンシャルを発揮した。

「これまで早期がんでの腫瘍マーカーの感度は10%ほど。大阪大学が発表した、見つけるのが難しい早期すい臓がんの感度が6割を超えたのは世界的に珍しい発見。また、この研究で一番苦労したことは〝早期膵がん患者の尿サンプル集め〟だったと聞いている」(広津氏)

 共同研究を行った大阪大学は、全国の医療施設に協力を仰ぎ、サンプルを集めに東奔西走。とりわけ膵臓がんは、早期患者がほとんどおらず、年間でも10例ほど。同大が世界的にも珍しい早期膵臓がんの患者サンプルを数年前から集めていたことで、貴重な研究につながった。