「プレバト!!」夏井いつき「うっかりシングルマザーに…」俳人として初の「種田山頭火賞」受賞
「俳句を作るだけでご飯をいただくことはまず不可能な世界で、どうやってご飯をいただくかと考えた時に人様のお役に立つしかないなと思って、“俳句の種まき運動”をコツコツと30年くらいやってきました。やればやるほど甲斐のない仕事だなというか、俳句の種をまいてもまいても全然芽が出ませんし、俳句ってそんなにみんなから古臭い、つまらない、退屈、年寄りのやるものだと思われていたんだなということを、日々自分の骨身に刻みながらという30年でした。60を超えてやっと、多少は松山に御恩返しができるところまできたかな、自分を褒めてやりたいなと思いかけた時にこういう賞をいただきました。自分で自分を褒めるより、人から褒められたほうがうれしいんだなとしみじみ思っております」
今後の活動にも「山頭火が松山という地を、あったかい土地で温泉が沸いてぽっくり往生できる場所として選んでくださったことが、今の俳句の都・松山にとってとても大きな宝物になっていると思います。これは続けないといけないな、もりもり盛り上がる雲にならないといけないなと思いを新たにしています」と意欲を見せた。
選考した作家で国文学者の林望は、夏井の活動を「『句集 伊月集 梟』を拝読しても、『え~!?』という表現があちこちに出てきて最初は面食らうが、よく読むと表現の背後に自然に対するやさしい目や真摯な観察眼が感じられる」として「そうした活動の一環として『プレバト!』という番組にお出になったことによって、今まで俳句に接したことのない何百万人もの人が俳句に接した。俳句が文学世界だからといって、研究だけにとどまっていては広がっていかないわけです。神仏論の中に和光同塵という言葉があるのですが、夏井さんは通俗なテレビの世界で和光同塵的な活動をされ、同時に俳句甲子園で若い人たちにも勧めるといったさまざまな面がある」と評価。
作家の嵐山光三郎は「紀伊國屋書店や神田の書店に行くと、俳句のコーナーに本がいっぱい並んでいて、多くの人が俳句の本を読むようになったのは夏井いつきさんの功績です」と評し、『オール讀物』の作家・夢枕獏の連載「仰天・俳句噺」の内容を紹介。「夏井さんの現在の夫である(加根)兼光さんが肺がんの手術をした時に作った『摘出せる肺は蛍の匂いして』という句を見て、夢枕獏は自分もがん闘病中ですからものすごく衝撃を受けるんです。つまり、夏井いつきさんの句というのはとんでもなく剛球なんですね。夏井いつきという人はものすごいもののけを心の中に飼っていて、それを俳句で出して伝える俳人だということです」と称えた。