ラスト1マイルな乗り物。折り畳み電動車いすに試乗してみたら、欲しくなった。<寺尾聖一郎の「SDGsなライフシフト」>

このコラムでは、国内外のSDGsの17のカテゴリーから、毎回、教育、ライフスタイル、アート、スポーツ、ビジネスなどの最新情報を元に、 “日本一わかりやすいSDGsの紹介”を目指して連載しています。

 

障がい者だけでなく、誰もが気軽に車いすに乗る時代

15年程前、アメリカの友人夫婦の奥様が電動車いすを持ってきて、銀座の買い物をスイスイと楽しんでいる場にご一緒させてもらいました。銀座4丁目の横断歩道を渡る電動車いすを人々が振り返って見ていたのを記憶しています。デジタル技術の進化と蓄電池の軽量化で車いすはモビリティー分野でも目覚ましく進化しています。

 

こんなモビリティー待っていた!

11月1日、WHILLは、軽量化、折りたたみ可能な新型の近距離モビリティ「WHILL Model F(ウィル モデル エフ)」を発売しました。価格は26万8000円(非課税)。

WHILL Model Fの特徴は折りたたみが可能で非常にコンパクトなこと。重さは27㎏(バッテリー含む)と前のモデルの約半分の重量。制約のあるスペース(マンション、電車など)への持ち込みが容易になります。

先日試乗発表会で私も試乗させていただきましたが、とにかく乗り心地が楽しい。手元のリモコンで簡単に操作でき、免許も不要、歩道での走行も可能です。デザインもモダンで、操作性にも優れているので、高齢者に限らず誰でも楽しむことができる新しいタイプのモビリティーという感想を持ちました。

 

国内初の電動車椅子の短期レンタルサービス

国内で初めての短期レンタルサービス「WHILL日額レンタル」もスタートします。料金は1日3840円(3日間のレンタルの場合、非課税、送料別)で、旅行先で、出張先で、親の滞在期間中に、など利用者の移動スタイルに応じたレンタルサービスです。

コンパクトな電動カートとして遊歩スキップneoSH02(セリオ、35万8000円・税込)がありますが、位置づけは電動カートで、重量も89㎏(バッテリ込)なので、旅先で持ち運ぶには現実的ではありませんでした。WHILL Model Fの登場でコロナが徐々に収束しれば、買い物や旅でも高齢者や足の不自由な方の移動の機会がより増えていくと思われます。

 

多様化する移動手段

「MaaS」という言葉聞いたことありますか?マーズと読みますが、移動手段をサービスとして提供する“モビリティー革命”の1つです。MaaSは「Mobility as a Service(モビリティー・アズ・ア・サービス)」の略で、「公共交通インフラの問題を、クラウドの技術を用いて解決する試み」です。

電車やタクシーやバス、飛行機などの複数の交通手段を乗り継いで移動する場合、アプリで簡単に検索することができるようになりましたね。しかしその都度新幹線のチケットを予約したり、タクシー乗り場で待ったりしていましたが、マーズが機能すると、多岐にわたる乗り換えを一覧化するだけでなく、検索から予約、支払までを一度で済ませることができます。つまり一度の検索で予約から支払いが完了し目的地まで移動のストレスなく到着できるという優れた仕組みです。

 

街で見かける電動キックボードたち

電動自転車のシェアリング事業を手掛けるLuup(東京都渋谷区)は2021年4月から、公道を走行できる電動キックボードのシェアリングサービスを開始しています。Luupが提供する電動自転車のシェアリングサービスと同じ形式のサービスなので、ユーザーは提供エリア内のポートにあるQRコードを専用のスマートフォンアプリで読み込むだけで、電動キックボードをレンタルできるようになりました。このサービスは現在、渋谷区や世田谷区など都内6エリアで提供されています。

今年4月に道路交通法案が提出され、電動キックボードに関する規制緩和が明確化したため、今は小型特殊自動車として扱われています。ユーザーは免許証を所持する必要があり、アプリ上で運転免許証を提示したあと、交通ルールなどを問うテストに合格する必要があります。ヘルメットの着用は任意とされています。利用料は最初の10分が100円、以降は1分ごとに15円(いずれも税込)。事故が起きた際の保険サービスも広がっていて、三井住友海上火災保険は7月16日、シェアリング用電動キックボードの保険制度を作ったと発表しています。

画像:Luup公式サイトより

電動キックボード、時速15キロ以下免許不要 規制緩和にむけて

次世代モビリティーの普及が海外で進む一方、国内はというと、来年春の通常国会で道路交通法の改正に向けて動き出しています。今までは電動キックボードの法律上の扱いが不明確で道路交通法などにも合致しないので、ルール整備を求める声が関連事業者などから出ていました。①時速6キロ程度までの歩道通行車②同15キロ以下で車道や自転車専用レーンを走れる小型低速車③同15キロ超で車道のみ走行が認められる原動機付き自転車。電動キックボードは時速15キロ以下に制限できれば自転車と同様に路側帯や自転車専用レーンを走行でき、運転免許も不要になります。街中を移動する乗り物が増えて楽しくなってきましたが、事故には十分注意したいものですね。

 

ガジェット好きの私は、長年セグウェイに憧れていました。5年程前にJ-ZOOMという電動式キックボードと巡り合い約12万で購入しました。試乗会で自ら乗車指導をしてくれたJ-ZOOMの社長さんはゴールドマンサックスのご出身だったのが印象的でした。社長さん曰く、海外では当たり前な公道のキックボード社会が日本もやってくると。先駆けのビジネスでしたが、道路交通法が整備されていなかったためか、現在は法人は撤退したようです(個人調べ)。

その後瞬く間に電動自転車のシェアリングビジネスが広がり、前出のLuupのような電動キックボードレンタルがローンチし、Maasのような移動手段の最適化ビジネスも現実化してきました。人生100年時代には高齢者になっても人生を楽しむ人がより一層ふえていくことでしょう。

どのビジネスもシリコンバレーや中国本土では既に日常化しており、起業家たちは次のサービスを次々と創出してきています。私が試乗した折り畳み式電動車椅子WHILL Model Fも元日産自動車のデザイナーだった杉江社長をはじめとする創業者たちが抱いた疑問「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」車椅子の人たちに直面し、デザインとテクノロジーの力があればそれが超えられる。そう考え、創業メンバーたちが、誰もが乗りたくなる、革新的な一人乗りの乗り物(パーソナルモビリティー)を自分たちで作ろうと決心したと述べています。(一部HP引用)

試乗会に同席したWHILLの社員さんたちは皆非常に若く、福祉ビジネス的な雰囲気を全く感じさせませんでした。実際に試乗した乗り心地は、最高。私でも欲しくなる乗り物でした。5年前に街出会った電動キックボード(JZOOM)の時の感動と同じ気持ちでした。もし自分の両親が生きていて、車いす生活になったとしてもWHILL社のような電動車いすがあれば、世界中一緒に旅行ができたのではと思っています。

SDGsが掲げる「だれも取り残さない社会」の先には、「だれもが楽しめる社会」がすぐ目の前に待っている。そんな気がした今回の取材でした。

■プロフィール 寺尾聖一郎 ソーシャルコンテンツプロデューサー
1964年 東京都生まれ。(株)リレーションズ代表取締役
エンタテインメント&コンテンツビジネスを中心に31年間勤務した大手広告代理店を2020年に早期退職。自らパーソナルトランスフォーメーション(PX)を志し、人生100年時代のライフシフトを実践中。”アイデアで世界を繋ぐ”を目指すPRクリエーティブ会社(株)リレーションズを設立。同年ニューホライズンコレクティブ社のプロフェッショナルパートナーとなる。東京浜松町に2020年8月に開業したダイアログミュージアム”対話の森”のPR&企画プロデュースなど担当している。
趣味は料理、テニス 
障がい者スポーツ指導員、准認定ファンドレイザー行政書士、宅建、調理師の資格を保有する。NPO法人LWC理事「クイズに答えてお米を寄付するサイトハッピーライスの運営」 https://happyrice.org/https://happyrice.org/
一般社団法人 防災キャンパー協会プロデューサー
Twitter:@recommendertera