小さくてもふもふ!コケ愛好家・藤井久子さんに聞く身近な「コケめぐり」の魅力
コケ愛好家として知られるフリーランスのライターで編集者の藤井久子さん。コケを目的として散歩や旅行、山登りなどをする「コケめぐり」をテーマとした新刊『コケ見っけ!日本全国もふもふコケめぐり』(家の光協会)が発売中だ。新宿区「長照山 陽運寺」にて、コケの魅力と「コケめぐり」について聞いた。
写真上:新宿区「長照山 陽運寺」にてルーペを覗く藤井久子さん/写真下:参道のコケを「ジャゴケは人の手で植えたものだと思います。大黒天の下にホソバミズゼニゴケ、ヒメジャゴケもありますね」と解説(撮影:蔦野裕)
第三次登山ブームが訪れた2008年頃、八ヶ岳などに登るようになると林床に広がるコケの森に心を奪われたという藤井さん。
「本にも書いたのですが、屋久島旅行に行った時に、ガイドさんに縄文杉を見に行くべきか聞いたら『まず先にコケを見るべきですよ』と教えてくれたのがきっかけです。屋久島はもともと花崗岩の島で、何もない状態からあの森ができているのですが、土台は岩の上にいついて群落を広げていったコケなんです。樹齢1000年以上という屋久杉や、屋久杉の中でも最大級の縄文杉に目がいきがちですけど、足元にはたくさんのコケが生えていて、世界自然遺産として保護されている場所には、モッシーフォレスト(蘚苔林、せんたいりん)と呼ばれるコケの森があります。屋久島は湿度が高いことと、標高差があって冷温帯から亜熱帯までのコケが生育しているので、ほかの地域とは別格のコケスポットだと思います」
そこで図鑑を買ってきて生態を調べるなど、本格的にコケにのめり込み始めたという。
「コケの本を読んで外に出てみると、山ではなく人の暮らしのそばにも必ずコケがいることが分かりました。そこからコケを目的に近所をぶらぶら歩くようになり、いろんなコケに会いたくて各地を回るようになりました」