SDGsの原点が会津漆器にあった<寺尾聖一郎の「SDGsなライフシフト」>

このコラムでは、国内外のSDGsの最新情報を元に、17のカテゴリーから毎回、教育、ライフスタイル、アート、スポーツ、ビジネスなどから“日本一わかりやすいSDGsの紹介”を目指して連載しています。

写真:会津漆器とダイアログインザダークのコラボ漆器商品「めぐる」ブランド

こんにちは、今回は日本4大漆産業の聖地、会津漆器を訪ねました。縄文時代から続く日本の漆文化を、全国各地で受け継がれている100年の循環サイクルで生産される漆工芸の世界を紹介します。

1万2千年から続く「漆」の技術。

世界最古の漆は福井県鳥浜貝塚で発見された約1万2600年前の木片から確認されています。これまで大陸から日本に持ち込まれたとの見方から一転して、漆は元々日本国内に自生し、その文化が大陸に伝わったという説も出始めています。

100年かけて作り、100年かけて使う循環サイクル

「消費の反対は循環です」と語るのは、会津漆器をつなぎ、伝え、生み出す活動を続ける「漆とロック」の代表、貝沼航さんのお言葉が印象的でした。

漆器の木材は樹齢100年以上の木を伐採し、数年かけて器を製造します。出来上がった漆器はその後100年以上日常生活で使うことができます。一方、プラスチックの製品は石油から作られますが、石油の精製には数億年の歳月が必要とされ、仕上がったプラスチック製品は短い期間で消費され破棄されています。この需給のバランスが絶妙にあっている会津漆器の生産サイクルがサステナブル社会を目指す今注目されているのです。

 

会津漆器の新ブランド「めぐる」

今回の取材では、最初の写真で紹介した会津漆器の新ブランド「めぐる」の製造過程を訪ねました。

このブランドは、東京にある暗闇のソーシャルエンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」で活躍するアテンドたち(参加者を案内する視覚障害者のスタッフ)とコラボレーションで生まれた新ブランドです。日本では、お味噌汁など食器を直接唇に当てる食文化があり、唇にあたる器の淵は非常に繊細なデザインが求められます。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドさんたちは、専門的なトレーニングを積んだ全盲の方です。「めぐる」は、視覚を頼らずに生活していることから、手先や唇の繊細な感覚を持つ彼らのアドバイスを元に、会津漆器職人と共に数年間かけて試作と改良を経て完成させた世界初の漆のソーシャルブランドなのです。

 

*ダイアログインザダークHPより

 

 

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