草彅剛、慶喜ロス明かす「寂しいなと思っていました」<青天を衝け>

 

 栄一にとっては、慶喜の馬を追いかけた青年時代も、新政府を経て銀行の頭取となってからも、慶喜は特別な人。慶喜にとっても栄一は特別だった。

「栄一とは年が2つぐらいしか変わらなくて実は同世代。違うところで育ってきましたが、運命共同体みたいな。2人で自分の人生を全うしているので、傍にいてほしい、傍にいなくてはならない人だったというか。無くてはならない人、そうなった感じがします。(新政府への)出仕を進めたのも出会ったときから、栄一には感じるものがあって、自分の思いとか、すべてのものを託したところがあると思います」

 慶喜の最後のシーンも栄一が傍にいる。

「長く一緒に撮影しているので、2人の空気が出来上がっていたなと思います。これが大河ドラマの醍醐味というか。僕の好きな家臣に亡くなってしまう人はたくさんいました。(でも栄一は)同じ時代を歩いてきた感じがして、言葉を交わさずに、空気感ができているのがうれしかったです。

 (最後のシーンは)なんかもう自分の中で静かにこみ上げてくるものがありました。栄一も通り越して亮君を見ているというか。1年間、僕が慶喜、亮君は栄一を楽しんできた同志として、最後は役を超えたもので亮くんと仕事ができたんじゃないかな」

 栄一にとって慶喜は輝かしい存在だった。栄一を演じる吉沢亮は草なぎを輝かしい大スターだと言い、草なぎと自分自身との関係が芝居にも反映されたとインタビューで話している。

「亮君は、いろんなところでほめてくれて、ありがたい限り。僕の方が長く生きていて、一応先輩ではあるのですが、役になるとそういうのは関係なくて。亮君から栄一にかける思いが伝わってきて、そういったものに僕も感化されました。まっすぐな栄一、亮君のまなざしが素晴らしいなと思って。栄一のおかげで、余計なことを考えずに、すごくピュアなお芝居ができました」

 吉沢には大いに刺激を受けたよう。

「亮君の役って大変だし難しいと思うんですよ。僕なんか出てない回が多いのにあたふたしているのに、毎回出ていてあんなにしゃべっている亮君はどうなってるのかなって。この1年ずっと台本を手放さずにやっていたんだろうなと思います。そういう彼の努力や本番での瞬発力を目の当たりにすると、すごい刺激を受けて。芝居ってもっと可能性があるんだな、俺ももっと頑張るよ! そんな感じですね。亮君のおかげで、もう一度がんばろうかなって思いました(笑)」

 改めて、大河ドラマ、久しぶりの連続ドラマには、どんなことを感じたのだろうか。

「大作で、規模も時間も、すごく大掛かり。準備も必要ですし、すごいドラマだったなって思います。それに出演できた。こういう仕事をする人間としてはうれしかったです。たくさんいい思い出もできました。……楽しかったことは、亮君と最後までいれたこと。吉沢亮君という素晴らしい役者さんと長くお芝居ができたことです。渋沢栄一という役を最後まで妥協することなく、自分の命をかけて演じている。そんな彼の近くにいられたことで元気になったというか。自分を次のステップに持って行ってくれました」

 また、大河ドラマへの出演は「自信になった」ともいう。「1年間、集中を切らさずにお芝居で来たということが大きな自信となったので、僕にとってはこのドラマが人生のターニングポイントになっているんじゃないかなというのがあります」。

 さて本当にラストが近づいてきた。残り少ない放送のなかでも、慶喜の様子は、視聴者としても気になるところ。

「一線を退いてからの男の哀愁というか、枯れていく感じが出ています。だけれども、栄一と過ごした日々は輝かしいもので……。そういう役は演じたことがなかったので、枯れていくなかで、栄一との輝きを感じているみたいなそういうところが見どころだと思っています」

 登場したキャラクターで演じたかった役はあるかと聞くと、渋沢平九郎とのこと。「若かったらやってみたかったなと思いました。あんなに追い込まれて亡くなられたのかとびっくりもしたし、岡田(健史)君、格好よかったなと(笑)。でもやっぱり……慶喜が良かったですかね」

 撮影終了後は「ほっとして次のステップに進むかなと思ったんですが、慶喜ってミステリアスな余韻があって、2~3日は寂しいなと思っていました」と、草彅。慶喜とともに生きた1年超は、間違いなく草彅に“新しい何か”を与えている。

『青天を衝け』は毎週日曜、NHK総合で20時から、BSプレミアム・BS4Kで18時から放送中。再放送(土曜13時5分~)もある。最終回は26日。