羽田圭介インタビュー “三十代の初体験”に「自分が思っている自分と、実際の自分は違う」
ジェルネイルや十二単を着る、女装など変身願望は強いほうですか?
「それはないですけど、変身させられるのに抵抗もないです。メイクには、いろんなことを施す場所があるなと。ジェルネイルでは、毎日ふとした時に見える自分の爪がカラフルだったら面白いし、せっかくこんなにスペースがあるなら何かしたくなるなと思いました。十二単は前後の人が膝をついたまま黙々と作業していて、その中でボーッと突っ立っていると自分が飾られていく感じが新鮮でしたね。最後にそこから抜け出すと、自分の抜け殻が空蝉のように残されていて」
「子供向けユーチューブ教室」で、子どもを観察する視点も面白かったです。
「自分のYouTubeの参考にする以上に、子どもたちへの衝撃が大きかったです。声の周波数の高さとか、男の子同士の“え、お前も9歳?”という会話に同じ年の子を見つけると驚くんだとか、子どもばかりの空間なのに空気感が老人ホームに似ているとか、YouTube教室なのに自分のチャンネルを持ってる子がいないとか。あまりにも自由な子どもたちに“やりがいって何なんだろうな”とも思いました(笑)」
「人間ドック」のウンコの表現や「もの壊し放題の空間」の兵士の訓練のくだりなど、不穏な描写もありますね。
「最初のほうは普段書いている小説や他のエッセイより若干ポップに書いているんですけど、それだけでは駄目。不穏な言葉でも書くべきところは書かないとあまり意味がないなと思うので、あえてそういう言葉を削ぐことはしていません」
「ユーチューバーになる」では、ご自身の本を売ることへのこだわりも感じました。
「厳密にいうと、自分が納得いく作品を書けるかどうかの自己満足的な部分が大きいんですけど、やっぱり作ったからには読んでいただきたい。どんな活動をしても、そこに結びつかないんだったらあまり意味がないなと思っちゃいますね」
これから体験したいことはありますか?
「小説家なんだから、英語という言語くらいちゃんと扱えなきゃ駄目なんじゃないかと感じて、英会話教室には通いたいと思っています。ToDoリストには入れていて、あともうちょっと、誰かが勝手に予約しちゃったら行くかという感じです(笑)。英語で発信できたら英語圏で売れるんじゃないかという思いもあります」
初体験を終えて読者に伝えたいことは?
「この本を読むと、スマートフォンのメモ帳にある“やってはみたいけど一年間手をつけていないこと”をやりたくなると思います。すごくやりたかったのに、やると全然それに興味を示せなかったり、別のことをすごく面白がれたり、全然違うところに感動したり、それはやってみないと分からないことですよね。本の中ではカラフルな写真をいっぱい使っていて、構成やデザインでかなりイメージが変わったのも新鮮でした。単行本化の作業でこんなに工夫した本は初めてかもしれません」
(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)