「性のスタート地点」【36歳のLOVE&SEX】#20

写真は女性向け風俗店「studioCH」より。マッサージはリラックスできるので理にかなっていますね…

 人間は、ざっくりいうと「男性」と「女性」の2種類に分かれる。それらは持っている臓器が違うし、骨格や筋肉量などに違いも出る。社会的に求められる役割も違う。それ故に、大切にする価値観も異なってくる。同じ「人間」なのだと教えられてきたが、あまりにも違い過ぎて、同じ生物なのかどうかさえ疑いたくなる。

 私がそう思い始めたのは、本当にこの数年のことだ。

 男も女も(それ以外の方もいるが、今回は便宜上この2種類についての話とする)仲良く手を取り合って、平等に活躍の場が与えられ、互いを理解しあえるはずだ、同じ人間なのだから、と思っていたが、どうやらそうではないようだ。といっても、社会的な不平等さについて言いたいわけではない。もっと根本的なことだ。

 女性向け風俗の利用者は、一時的な性欲を満たしたいという女性ももちろんいるが、精神的なつながりや、癒し、心の解放を求めて利用する方がとても多い。だから利用する際に、何日も何か月もかけて予約するキャストを吟味することがある。テクニック的な問題よりも、コミュニケーションの取りづらさや、ふとしたときに感じるキャストの言動への違和感のほうが、心が離れる理由になったりする。

 男性向け風俗ではそういった話はほとんど聞かない。たとえば、一ヶ月先の風俗を予約して、その日のために美容院に行ったり、服装を整えたり、筋トレしたりして準備するという男性の話は聞いたことがない。衝動的に瞬間的に、性欲に駆られて利用するケースも多いのではないだろうか。

 この差は最初、女性にとって性に対する免疫がなかったり、ハードルが高かったりするために生じているものかと考えていた。GIRL’S CHを担当していた頃、男性向けのAVを女性が見やすい内容に再編集してお届けする、ということをしていたのだが、その手法で多くの女性にAVを見ていただくことに成功した。だから、性に対して求める本質は男女それほど変わらず、見せ方や伝え方が大切だというのが、私の仮説だったのだ。

 ただ、女性向け風俗の分野に足を踏み入れて、AVと違う、風俗ならではの、利用者の声を聞いているうちに、別の仮説が浮かんできた。

 それは、女性が性に求めるものは「癒し」「リラックス」の要素が強いということだ。

 少し話はそれるが、AVはいかに見ている人を興奮させるかが重要だ。

 出演者のビジュアル、身体的特徴、コスチュームなど視覚的なこだわりはもちろんのこと、共感を生むドラマや、時には見たことがないようなびっくりするもの(例えば潮吹きはその典型だと思う)が好まれる。

 しかし、興奮することで何が起きるか考えてほしい。そう、男性の勃起を誘発するのだ。

 この世の中にある性に関するコンテンツは基本的に、人を興奮させるために作られており、それらは男性のために作られているものなのだ。

 逆にいうと、性=興奮、というのは男性の持つ性の特色だと言える。

 一方、女性は勃起しない。だから、必ずしも興奮することが性に結び付くとは言い切れない。

 SILK LABOの作品を取り扱っていた際にユーザーの方が、作品や一徹さん(女性向けAVに数多く出演している男優さん)に癒される、とおっしゃっているのをよく耳にした。

 また、女性向け風俗では、マッサージが組み合わされたコースを導入しているお店が多い。

 先日このコラムでも紹介したブランドBONHEURのグッズには、利用することでリラックスしてほしいという思いが込められていた。

 それらはもはや、女性向けのアダルトには癒し要素が必要、というよりも、癒しこそが女性の性的な満足のスタート地点にあると言えるのではないだろうか。

 と、最近はほぼ確信しているのだが、皆さんはどうだろうか。

 こうして真面目に書いてきたが、Twitterなどでよく見かける「女性が気持ちよくなれる方法」も結局のところ、リラックスすること、が結論になっていると思う。医学的な方面の意見も、経験豊富な個人の方の意見も、似たようなところに落ち着いているような印象だ。

 性=興奮、の男性のイメージがあまりにも強く、だからこそ、自分にフィットした性の“かたち”が見つからず、はがゆく感じている女性は多いと思う。

 でもそれはあなたが間違っているからではない。無理に世間に合わせていく必要はない。そのはがゆい思いこそが、自分の性に目覚める第一歩なのだから。

田口桃子…2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2013年に女性向けアダルトサイト「GIRL’S CH」を立ち上げ。以来、GIRL’S CHの現場リーダーとして、サイト運営・企画・広報に携わる。
現在は新規事業の立ち上げを担当。