「特集 岩井秀人」が2カ月連続で日本映画専門チャンネルで放映。 今年7月に開催された「なむはむだはむ」初の音楽ライブもテレビ初放送!
全国各地の子どもたちのアイディアに翻弄されるおじさん(プロフェッショナル)たち!
0歳から入場可能な場内は親子連れの客層が目立つ。またコロナ禍での開催ということもあり客席空間にも余裕があり、ふだんのWWWとは趣の異なる穏やかな光景が広がる。セットリストの原作は彼らが滞在制作を行った、北は十和田湖から、松戸、鎌倉、城崎、そして最南端は沖縄まで多様な地域の子どもたちによるものだ。
開演。スタンドマイクの前に3人が静かに立つと吐息を漏らし始める。しだいに振りが加わっていき「もっきんは、つらい。てっきんも、くぎもいたい。」(作・なつき)というタイトルが目に留まる。どうやら人に打たれて使われる楽器や道具の痛み・苦しみを表現していた3人は、そのまま2曲目のディスコビートにあわせて踊り始める。そして謎の手書きタイトル(作・にじいろモルツ)を指差した森山が「読めるか?? 読めない!! だから俺たちは歌う!!」と高らかに宣言すると、文字を覚えていない子ども特有の文字列を順番に歌いつないでいく。自然に笑い声と手拍子が増えていく場内は、言語の分からないアジアの国のクラブに迷い込んでしまったかのような不思議な空気に包まれる。
この日の最初のMCに入ると初ライブの開催に感嘆する3名。そのままエピソードトークに花を咲かせていると、いつのまにか「おもしろいこと」(作・あおな)の朗読へと繋がっている。その後、舞台上はバンド編成に変わる(主にギターとベースを3人が変則的に担当)。十和田現代美術館に集まった子どもたち作「みえないひと」のナンセンス・ストーリーを岩井が怪しげな教祖のように語りかけてきたかと思うと、ポップからヘヴィメタルへと変容する「クローバーストーリー」(作・ありあ)で前野の悪魔的シャウトに赤ん坊が怯え、続く「きょうりゅうのえいがかん」では森山の高い歌唱力をしっかりと聞かせる。
そして待ち受けているのが前半のハイライト、「モールのゆうわく」(作・ふじいせいげん)だ。新たに鎌倉のワークショップでできたという大作で、岩井の朗読にあわせショッピングモールの様子を前野と森山が身体で表現していく。前野が弾き語るメッセージソング(?)「先人たち」でこの物語は幕を閉じるのだが、お買い得さゆえにショッピングに翻弄されてモールに囚われてしまう親を描写する子どもの冷ややかな目線にはハッとさせられるものがある。