<インタビュー>小栗旬「“新しい”鎌倉時代になっている」新大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
「ジャズセッション」のようなアプローチ
大河ドラマは、主人公はもちろん、それを取り巻く人たちの成長や変化を1年かけて描く。
「史実ですから、僕たちはどうしてもこの先にどうなるかということがわかっているじゃないですか。でも、僕らが演じている鎌倉時代の皆さんは先に何が起こるかはわからないし、その時の判断が真実なんですよね。だから、撮影においてもそういうことをやっていきましょう、と話しています。もう少し先にこうなるから、今はこうしようという計算はやめて、今こう言われたから、こういうリアクションをする。そういう突発的なことを大切にしています」
役のイメージを共有するようなこともしていないといい、ジャズセッションのようなアプローチで進んでいるのだそう。それもまた、さまざまな現場を経験してきたキャスト陣が揃っているからこそ可能なことのようにも思える。
そんな中、小栗はどのように義時にアプローチしているのだろうか。
「最近は台本をもらうと、読みながら、同じことが自分に降りかかってきたら自分だったらどうするか、どのくらいで受け止めるかなって考えるようになっているんですが、鎌倉時代に生きた人たちの感覚になってみるのは難しいです。例えば、源義経。彼は若いんですけど、源氏の棟梁の兄弟だからということで、すべての家人に強めの発言なんですよ。年功序列を刷り込まれている今の時代では年下にそういう態度をとられたらムカつきますけど、その時代の人にはそうした発想が一切なかったのかもな、とも思うんですよね。刷り込まれている僕たちにすると、その感覚、なかなかわかりづらい」
時代劇に「ちょっと」はアリか? “三谷大河”
小栗ら豪華なキャスト陣はもちろんだが、三谷幸喜による脚本もまた本作が注目を集めている理由だ。三谷は舞台や映画、ドラマなどさまざまなフォームで数々の名作を世に送り出し、大河ドラマでも『新選組!』『真田丸』で視聴者を喜ばせた。本作においても、軽快さと重厚さ、ユーモアとシリアスを絶妙なバランスで組み合わせた脚本で、歴史や時代劇のファンには新たな見せ方でサプライズを、時代物ビギナーには現在と画面の向こう側で描かれている時代が地続きであることを体感させて、するっと物語の中に引き込む。
なかでも「ちょっと」はいい例かもしれない。
「大河ドラマや時代劇には、『ちょっと』って言っちゃいけないと思って参加するんです。でも、三谷さんの脚本にはそれが結構出てきます。自分のセリフにも『ちょっと待ってください』ってありますし、源頼朝役の大泉(洋)さんには『ちょ、ちょ、ちょっといいかな』っていうのが(笑)。大泉さんも『まさかこんなセリフを大河で言うとは思わなかった』って言ってました。時代劇でアドリブになると、その時代の言葉を口にしなければならないんですけど、この作品ではそういうところでの縛りが薄いので、その分、面白くできているというところもあるんじゃないかなと思います」
北条家の面々によるやりとりが理由なく面白い理由もそこにありそうだ。
「どの大河ドラマもスタートは家族の物語から始まるところがあると思いますが、源頼朝を推挙して挙兵するまでは、北条家のみんなのホームドラマみたいになっています。三谷さんのユーモアであふれているので、楽しんで見てもらえるじゃないかなと思います」
家族内でのやり取りはコントのようでもあって“尊い”。
「姉上(北条政子)とのシーンは面白いものになっていると思います。(演じている)小池栄子さんはどしっと構えて受け止めてくれる方。義時って一番若いポジションなので、いつも自由にやらせてもらっているという感じです。政子さんにはいつも強く言われるんですが、妹の実衣にはすごく当たったりして、お前ここにしか強く出られないんだって思いますね(笑)」