武田砂鉄インタビュー「小学生の頃から聞いていた人たちが、これからもしゃべろうとし続けている」
東京で初めての民間放送局として開局し、70周年を迎えたラジオ局「TBSラジオ」。書籍『開局70周年記念 TBSラジオ公式読本』(リトルモア)では、同局にゆかりのある31人が思いを語る。自身もTBSラジオのパーソナリティーで、責任編集を務めたライターの武田砂鉄に聞いた。(撮影:蔦野裕、撮影協力:新宿「どん底」)
ものごころついた時から家でTBSラジオが流れていた
全368ページにインタビュー、寄稿、対談、現場リポートなどが詰まった『TBSラジオ公式読本』。書籍ができあがって初めて手に取った感想を、武田はこう語る。
「最初は250ページくらいのつもりでしたが、いろいろな取材を一気に進めていく中で“これは360ページくらいになるな”という感じになってきたんです。せっかくやるならある程度分厚いものにしたいと思ってはいたので、結果的に70周年にふさわしい肉厚な一冊ができたのではないかと」
自身の原体験となるラジオも、TBSラジオだったという。
「実家は、基本的にテレビをつけない家で、ずっとラジオがかかっていました。父親が割と早い時間に家を出ていたのですが、朝からラジオがついていて、学校から帰ってきてからもついていたし、自分がものごころついた時から家でTBSラジオが流れていたという感じです。今回登場している大沢悠里さん、森本毅郎さん、生島ヒロシさんなど、自分が小学生の頃から聞いていた人たちが今もしゃべっていて、これからもしゃべろうとし続けている。その声を一冊にまとめることができ、うれしく思います。
僕は学生の頃から音楽ライターになりたくて、ヘヴィメタル好きなので、音楽評論家の伊藤政則さんのラジオ番組をずっと聞いていました。BayFMとFM FUJIで伊藤さんの番組をやっていたのですが、実家のある多摩地域はBayFMが入りにくく、いつもFM FUJIの番組を聞いていました。リクエスト葉書も書いて、今思えばそんなに好きじゃないバンドを“高校生がこういう曲を選んで送れば目に留まるんじゃないか”という悪知恵を働かせたり(笑)。とはいえ“いつも聞いているラジオから自分の名前を呼ばれたい”という純粋な気持ちでした。放送を録音した120分のカセットはいまだに実家に残っていると思います。通学途中に伊藤さんやTBSの伊集院光さんのラジオを録音したテープをよく聞いていましたね」
豪華な出演陣はどのように決めたのか。
「この本は“TBSラジオ史”という歴史を総括する本ではなく、今、TBSラジオがどういう姿になっているのかを輪切りにするというか、時間や曜日に沿って一本の線にしてみるという意識がありました。歴史については、長年やってきた人たちがどういうプロセスを経て今、ラジオをやっているのかを聞けば、いくつものエピソードが出てくるだろうと考えました。結果的には現役パーソナリティーだけではなく、多くの重要人物が登場してくださいました」