武田砂鉄インタビュー「小学生の頃から聞いていた人たちが、これからもしゃべろうとし続けている」
冷静になってみると何で終わったのかなと思います
取材の中で特に印象に残ったことを挙げてもらった。
「皆さんに共通するのは、10年やっている人でも30年やっている人でも、毎回毎回“これで良かったのかな”“もっと面白くできないかな”と繰り返し考えているところ。それがリスナーとして聞いている限りは分からないというのは、卓越した技やいろんな鍛錬があるということ。本を読んでいただければよく分かってもらえると思います。僕らが聞いている“いつもの感じ”を作るために、何を乱しちゃいけないかとかどういうところを強化しなくちゃいけないかというのを、考え続けているんだと思います。“隠れて努力しています”ということではなく、考えに考えて現在があるという事実を知りました。
ラジオパーソナリティーってこれだけ毎日しゃべっているのに、自分のことはあまりじっくりしゃべらなかったりもする。今回の本を多くの読者が手に取ってくれている理由のひとつに“この人はこんなことを考えているんだ”と知る機会が意外となかったというのはあると思いますね」
これだけの内容を、わずか半年間ほどで制作したことにも驚く。
「冷静になってみると何で終わったのかなと思いますけど。でも、やれば終わるんです(笑)。僕が以前働いていた出版社に『文藝別冊』という人物特集シリーズがあって、基本的に編集者が1人で1冊担当するんです。これが若手の課題で、たくさんの人に原稿を頼んでインタビューを取って昔の原稿を引っ張り出して、短い期間で一冊にまとめる。大変だけどすごく楽しかったんですよ。その感覚がかろうじて体に残っていたので今回の本ができたのかもしれません。そういう経験がなければ、たぶんパニックになっていたはず。出版元の編集者も同じやり方で本を作ったことのある人だったので、お互いに“無理に頑張れば終わりますよね”というところで合致していたと思います」
自身も多くのラジオ番組に出演してきた武田。
「2014年秋に赤江珠緒さんの『たまむすび』のゲストで出たんですけど、2015年に本を出してからプロモーションでさまざまな番組にゲスト出演したり、荻上チキさんの『Session-22』の代打をやらせてもらったり。僕自身ラジオが好きだったので、AMFM問わずラジオのオファーであれば何でも出ています。
ゲストで出た時は、自分がしゃべることで何とか楽しんでもらったり興味を持ってもらおうという着眼で臨めますけど、現在パーソナリティーとして出演している『アシタノカレッジ』では、2時間全体をどういう温度感でやったらいいのかなとか、全体を見ながら“あれで良かったのか”“これで良かったのか”と毎回考えています。あまり自分の話をし過ぎてもいけないし、かといって相手の話を聞いているだけじゃいけないし、そのバランスがどこにあればいいのかというのはいまだに手探りの状態ですね」
武田の〈放送のおとも〉を聞くと……。
「これが……面白くないことに何もないですね(笑)。イヤホンも普通だし、ペンも普通だし、特に何もない。始まる前にトイレに行くくらいですかね。あとは入り時間をあまり変えないというか、いつも同じ電車で行くという変な神経質さはありますけど、皆さんそれぞれの守りごとや決まりごとがあるんじゃないかと思います」