鈴木宗男氏が勉強不足の政治家に苦言。北方領土問題は「返還」ではなく「引き渡し」
「昔のソ連、中国、北朝鮮と向き合うと何かしら大きな力がはたらく」
このシンガポール合意は1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約を加速させることに合意したものなのだが、鈴木氏は「1956年の日ソ共同宣言はソ連側といわゆる国交正常化、国交回復を約束したもの。その第9項に“平和条約を結んだ後に日本の要求に応えて、ソ連の善意で歯舞群島と色丹島は日本に引き渡しをする”となっている」と説明。そして「“引き渡し”という言葉の重みを考えてほしい。“返還”というのは人から預かっていたものを返すこと。引き渡しは自分のものを渡すこと。これが56年宣言に書かれている正しい日本語。よく勉強していない政治家が“返せ”とか“返還”というが、これは国際社会では通用しない。正しく理解しなければいけない」などと説明した。
その後、27回の日露首脳会談が行われたものの問題解決に至っていないことについてはロシア国民の中には「戦後の正当な手続きで手にした島だから返す必要がない」という認識が大きいことと、一昨年からの新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックを挙げた。鈴木氏は「ロシアは2020年の5月9日に戦後75周年の対独戦勝記念式典を盛大にモスクワでやる予定だった。安倍総理も行く予定だったがコロナが発生して式典がなくなった。安倍総理はプーチンさんと会談をして、前の年に約束したことを詰めて、平和条約締結に向けて、一気呵成に行こうと思っていたがそれができなかった。これが悔やまれる。この2年間、首脳会談がない。菅さんも岸田さんも電話会談だけ」と現在の状況を踏まえたうえで「こういった平和条約は機微の問題ですから、対面で首脳会談をやれば動くと思っています」とコロナ終息後の対面での交渉再開に期待を寄せた。
その一方で「つくづく思うのは昔のソ連と向き合う、あるいは中国と向き合う、北朝鮮を向き合うと何かしら大きな力がはたらく。田中(角栄)先生のロッキード事件というのも、中国との国交回復と無縁ではないと思っている。北朝鮮に行って、日朝正常化に風穴を開けようとした金丸信先生も。私も誰よりもこの問題でロシアと向き合ってやってきたが、何かしら大きな力がはたらくなと思う。歴史を作ろうと思えばまさに命がけ、ということを私自身経験した。ただ、政治家というのは時には命をかけるべきだと思う。ライフワークという言葉は日本では軽く聞こえるが、アメリカでライフワークといえば、命がけの仕事というのが政治家の常識。私は逮捕もされて、刑務所も経験したが国政に戻ってきた。私はあと3年何カ月か議員の任期がある。なんとか領土問題だけは元島民の皆さんはもちろん、日本の国益の観点からもまとめ上げていきたい」と改めて問題解決への強い決意を見せた。