90才のイーストウッドが魅せる“振り向きながらも前へ進み続ける”ネオウェスタン映画『クライ・マッチョ』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
引っ越したりしまして、ちょっとばたばたしていたんですが、ちょっとずつ落ち着きを取り戻してきた今日この頃です。
オミクロン株による感染者が急増していて、大変なところ、皆さんどうお過ごしでしょうか。
また劇場や映画館にいろいろな規制が入ると嫌だなあと思っているんですが、黒田はとりあえずしばらくは静観することになりそうです。
ということで今週も始めましょう。
クリントイーストウッド監督主演映画『クライ・マッチョ』を観てきました。
怪我で引退した元ロデオ騎手で、現在は馬の調教師として働いている“ザ・カウボーイ”という、渋い老人が主人公。
とある事情により、テキサスからメキシコへ少年を迎えに行き父親のところへ連れて行くことになり、少年と出会うところからがメイン。
数日かかる帰り道で、最初は最悪だった出会いから徐々に仲良くなったり、途中で喧嘩したり、車壊れたり盗まれたり、悪い奴や警察に追いかけられたり、未亡人と出会ったり…王道といっていいロードムービー的なストーリー。
ジャンルは“現代風西部劇”的な意味を持つ「ネオ・ウェスタン」と呼ばれるもの。
銃でバンバンしたり、投げロープで首を縛って馬で引きずったりしませんが、王道のロードムービーとウェスタンという、一見相反しそうな要素が見事にマッチしています。マッチョだけに。
マッチョというと日本では「ムキムキマッチョマン」とか“筋肉モリモリ”みたいなイメージが大きく、なんなら“ちょっと面白い”イメージを持っている人も多くいそうな言葉。
「渋そうな映画なのに、マッチョって!」思った方は映画中にたびたび使用されるので、「英語圏では、どういう扱いをされてるんだろうな」なんていう部分も、楽しんでみるといいかもしれません。
さて、本作で一番響いた演出が「振り返る」
「昔を振り返る」シーンも多くあるし、物理的にキャラクターたちが「後ろを振り向く」カットが非常に沢山出てきます。
でもね、全員、そのあとに「前を向いて歩きだす」
この映画自体、企画が中止になったり何十年もかけて「振り向きながら前へ進み続け」公開された作品なので、メタ的な視点も含め
「振り向きながらでも前へ進み続けること」
と、いうテーマが強く現わされていたと思います。
メインキャラクターたちが何に振り返り、どこへ進んでいくのか、振り返りたい時や立ち止まりそうな時、そしてカッコいいおじいちゃんが観たい方は是非、劇場へ!