世界的ダンサー田中泯 外国特派員協会での会見に質問殺到
映画『名付けようのない踊り』の記者会見が24日、千代田区・外国特派員協会にて行われ、ダンサー・俳優の田中泯と犬童一心監督が登壇した。
主演映画『HOKUSAI』、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など数々の話題作で俳優として異色の存在感を放つ一方、世界的ダンサーとして国内外の文化人やアーティストを魅了してきた田中泯。彼の唯一無二のダンスを『メゾン・ド・ヒミコ』(05)への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影した映画。
田中は「僕自身は映像に踊りを映すということに、非常に疑問に思っていました。僕の踊りは1回その場限りのものとして成立するように踊っています。なので監督には、踊りをそのまま映像に再生するということは拒否しますと伝えました」と明かし、犬童監督も「撮影中、僕は一切、泯さんにインタビューをしなかったんです。これはどういう踊りですか?というような説明を求めなかった」と、フィクションとも、一般的なドキュメンタリーとも異なる手法で撮影を進めていったと明かした。
田中は「僕はただ踊る人間としてカメラの前にいるということを2年間続けました。ただしカメラの前で同じことをすることは1回もなかった」と振り返り「“よーいスタート!”もなければ“NG”もありませんでした」と会場の笑いをさそう一幕も。
田中は「踊りを見て衝撃を受けた」という舞踏家・土方巽との交流についても振り返りつつ「僕は土方の影響を強く受けた人間ではあるが〈舞踏〉をやっているわけでは決してない」と話し「僕は〈舞踏〉はとっくに終わっていると思っている。日本では〈舞踏〉と“踊り”がよく混同されるが〈舞踏〉とは間違いなく精神のアクティビティーだった。〈舞踏〉という踊り方、ジャンルがあるかのようになっているが、そうではない」と、土方から始まった身体表現として海外でも広く知られる〈舞踏〉について語った。
まさにジャンルで語ることができない田中の踊りに、犬童監督が「僕が田中さんと同じ境地に至ることは決してないと思うが、映画を通して、その一端は感じられた気がする」と振り返ると、田中は「犬童監督は今や僕の踊りの仲間」と宣言。「言葉が生まれる前、本当の踊りの始まり」を世界の人々とともに追求したいと語る田中。「この映画をもとにしていくらでもディスカッションできる」と期待を寄せる通り、映画を見た会場の観客からも感想や質問が途切れることなく上がっていた。
映画『名付けようのない踊り』は1月28日より公開。