「TRF」SAMが盟友と小児がん支援に挑むわけ「その先に子どもたちの笑顔がある」

「TRF」30周年に「まだまだやりたいことも、やらなきゃいけないこともたくさんある」とSAMさん

「TRF」30周年、紆余曲折を乗り超え還暦を迎えた今

 1992年に結成された「TRF」も今年で30周年、これまでの活動を振り返ってSAMさんはこう語る。

SAM「TRF(当時はtrf)ってエイベックスの邦楽第1号アーティストなんですよ。今でこそこんなに大きくなりましたけど、当時は町田にある本当に小さな会社だったんです。僕らは小室哲哉さんに連れられ、何も分からないところからスタートして、周りのスタッフも全員の顔と名前が分かるくらいの人数しかいなかった。そこから会社が移転して、スタッフが30人になって、60人になって、だんだんフロアが大きくなって、アーティストも増えて……。

 こうして振り返るといろいろやってきたなと思うんですけど、今、率直な気持ちとして前しか見ていないので、そう考えるとあっという間だったなという気がします。30周年ではありますけど、この先どうやっていこうという気持ちがすごく強い。TRFでも個人でも、ホヤマとの活動にしても、まだまだやりたいことも、やらなきゃいけないこともたくさんあるので」

保屋松「アーティストが、長く活動を続けられるというのは本当にすごいことなんです。そこには必ず理由があって、SAMさんは担当していた当時から“自分はストリートダンス文化の創造と発展のためにやっていくんだ”とずっとおっしゃられていました。自分がパフォーマーとして踊るだけでなく、ダンスを社会貢献にどう結びつけていくかも含め、ダンス文化を世の中に広げていきたいという芯がずっとブレずに、愚直に活動を続けたことが30周年にもつながっているのだと思います」

 長い活動期間の間には、今だから言えるであろうこんなエピソードも飛び出した。

SAM「TRFに関してはいつ解散してもおかしくなかった。2000~2006年まで、グループでの活動は年に一度の夏フェス『a-nation』だけで、あとはそれぞれ個人の活動をしている時期が6年間もあったんです。その時期もずっとホヤマがマネジャーをしてくれたんですけど、状況を打開してくれたのも彼で、6年ぶりに新曲『Where to begin』を出した時のことは今でも覚えています。ずっとできなかったライブができて、新曲をリリースできる環境を作ってくれたのは、やっぱりすごくうれしかったです。

 今、彼は現場は離れているんですけど、僕らの気持ちとしてはいまだにマネジャーで、何かあったら“ホヤマに相談しよう”とすぐ電話します(笑)。一番身近で信頼できるスタッフのひとりです」

 今年1月に60歳を迎え、還暦となったSAMさん。現在の心境と新たな挑戦についても聞いてみた。

SAM「もともとダンスが好きで活動を始めて、10~20代の頃は“自分のダンスを人に見てもらいたい”という気持ちがすごく強かったんです。年齢を経ることでだんだん変化が生まれ、30代は下の世代に自分のダンスを伝えたい、新しいダンサーを育てようという思いが芽生え、40代でそれがより具体的な形になりました。40代後半になるとエンターテインメント、僕らの場合はダンスの力をもっと世の中に還元できるんじゃないかという気持ちが高まってきた。ですから、『LIVE EMPOWER CHILDREN』は僕らにとってものすごく意味のある活動なんです。

 また、2017年には高齢者の方の健康寿命を伸ばすことと、一般の方にダンスとエンターテインメントで笑顔になってもらうことを目的として、『ダレデモダンス』というプログラムを作って一般社団法人ダレデモダンスを立ち上げました。

 長年、ダンスを人に教えてきたんですけど、実は高齢者の方にダンスを教えるのは初めての経験で、親族の医師のひとりに協力してもらい、毎週患者さんたちとワークショップをするところから始めました。高齢者の方との接し方や、どういうプログラムにどういった効果があるのかを学び、その体験をベースに開発したのが認知症に備えるためのダンスプログラム『リバイバルダンス』です。

 2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています。認知症になると本人はもちろん、介護うつになるなど周りで支えるご家族も本当に大変です。高齢者の方にも適度な運動と規則正しい生活が大切なのですが、ダンスを通して定期的にワークショップや教室があれば、新しいコミュニティーもできますし、それが楽しみや生きがいにもなってきますよね。社会との接点をなくさないことはとても重要なので、これからは『LIVE EMPOWER CHILDREN』と『リバイバルダンス』で、いろいろなコミュニティーづくりの後押しができたらなと思っています」

 最後に、改めて2月15日の『LIVE EMPOWER CHILDREN』に向けてお2人からメッセージをもらった。

保屋松「今回はオンライン配信なので、病院で治療と向き合っているお子さんやそのご家族に見ていただいて、少しでも生きる勇気や力になればと思っています。また、小児がんという病気にはまだまだ社会的支援が必要です。ライブは無料で視聴できますが、さまざまな形で寄付を受け付けていて、いただいた全額を小児がんの支援に役立てています。このライブを通じて小児がんを知らない人たちにも病気のことを知ってもらい、ひとりでも多くの方に寄付いただくことで、さらなる支援の輪が広がればと思いますのでぜひご視聴をよろしくお願いします」

SAM「この記事を読んでくれた人たちが、こういうイベントがあるんだということを知ってくれて、そのうえでしっかり見ていただきたいなという思いです。小児がんの子どもたちの大変さというのは、ホヤマの息子さんを見ていてすごく理解できるので、お子さん本人もご家族も絶対にあきらめず、絶対に治るということを信じて治療に専念してもらいたいです。小児がんにも日々新しい治療法が出てきて、少なからず光が見えてきているので、本当に大変ですけどあきらめずに取り組んでいただきたいと思います」

「アーティストが長く活動を続けられるのは本当にすごいこと」と保屋松さん