今すぐツバをつけておけ!新時代を切り拓くアニメ映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

こんにちは、黒田勇樹です。

 さて、冬のオリンピックは終わったようですが、コロナのほうはまだわちゃわちゃしていて、通常営業にはまだまだ時間がかかりそうな今日この頃。
 僕は来るべき通常営業の日に備え、いろいろなものをためられるだけためておこうと思います。いや、ホント、何もやってないわけじゃないですよ。

 ということで今週も始めましょう。

黒田勇樹

 なんかもう、凄い簡潔に。
 筆者はそこまでアニメ界隈や、その制作陣に詳しいワケではないのですが
「あー、細田守とか新海誠を見つけたときと同じ気持ちだ(敬称略)」と思いました。
 10年後、アニメ好きの中で「え、アレ観てないの?」と、言われることが確実な作品、とでも言いましょうか?
 めちゃくちゃ、良かったです。金曜ロードショーでやっている未来が見えます。

 監督自体はしっかりとしたキャリアと実績のある方なんですが“劇場映画”は、初監督とのこと。
 こういう“マイルストーン”作品を、リアルタイムにスクリーンで見れるチャンスを、出来るだけ多くの人に、逃してほしくないと思える傑作でした。

 まず、シナリオの「省略の美」
「アレはどうして?」「コレはどうなったの?」みたいなことをツッコんだり語り合ったり、考察してYouTubeに投稿したりすることが当たり前になった現在のストリームの中で、そういう説明めいた部分を限りなく省略しているのに“描くべきこと”は、完璧に描かれているという緻密さ。
“裏設定”とか、あるのは全然いいんですが、それをマーケティングやプロモーションに使って、なんなら、公式側が“考察”で金儲けしてるの見ると「いや、まず、作品だけで完結しろよ」と、日頃思っている僕が「完璧にわかった!でも、もっともっと知りたいからファンブックとか出てたら買う!」と、思わせるほどのバランスの良さでした。

 そして、それを支えているのが、ハズレのない花江夏樹、梶裕貴、花澤香菜という声優陣、ふんだんに使われる[Alexandros]の音楽。この2者の醸し出す“耳心地”

「15才の男子中高生が主人公にしては“こまっしゃくれた”こと、言ってんな」みたいなセリフ回しや、勢いで押し通すようなシーンも、画面の美しさと、この“耳障りの良さ”で、全部すんなり入ってくる。

 話、絵、音、という“アニメ”のほとんどが、完璧に構成されているからこそ「勇気ある省略」が沢山なされ、成立していたのでしょう。
 ゲスト声優さんやスタッフロールなど、じっくり見てみると「あ、やっぱり皆がツバつけはじめてる!」と、思えるところもメタ的ですが、面白かったです。

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23