下北沢にミニシアター「K2」が誕生した理由「好きだった名画座がなくなって…」
クラウドファンディング事業のきっかけは「岩波ホール」
「K2」の立ち上げを前に、クラウドファンディングで資金調達したことも話題となりました。
「K2の前に、小規模映画館の支援を目的としたプロジェクト『ミニシアター・エイド基金』があって、思っていた以上にミニシアターを支えることに熱意や必要性を感じている方が多いと実感しました。目標金額を1億円に設定していたのですが、出資やシェアという形で支援が広がって最終的に3億円集まり、そういう思いを持った人がいることにすごく励まされたんです。ある種のオピニオンメディアとしてもミニシアターが必要なことを実感しましたし、基金をきっかけに“文化施設は不要不急だ”というトーンが明らかに変わったと思います。
K2のクラウドファンディングを通じ、下北沢に映画館ができることに意味や興味、必然性を持っている多くの方が浮き彫りになりました。もともと単なるお金集めをするつもりはなかったのですが、クラウドファンディングでファンや賛同者が掘り起こされ、出資したからこそK2に愛着を持っているという方もすごく多いと感じました。“今は住んでいないけど、昔縁があって応援したい”という方もいらっしゃって、いろんな形で時空を超えて興味や関心、愛着を持っている方たちに応援していただいたのはすごく重要で、そういう歴史をつなげていけるように頑張りたいと思います」
プロジェクトページの自己紹介に“これまで一番影響を受けている時間は「映画館で映画を観る時間」”とありました。大高さんの個人的な映画や映画館にまつわる体験は?
「学生時代は、大学が近かったので早稲田松竹にずっと入り浸っていました。もうなくなってしまった三軒茶屋シネマという名画座にもよく通っていて、個人的に自分が好きだった名画座がなくなっていった体験はけっこう心に残っていて、どんどん減ってしまう名画座を何とかしたいというところは今回につながっているかもしれません。事業としてクラウドファンディングをやろうと思ったきっかけも、岩波ホールで映画を見た体験がベースにあります。たとえば文化的な価値があって世界的に評価の高い映画でも、資金が回収できるか分からないという理由で配給されず、日本で上映できていないということがありました。
当時、僕はフランスの美大との交換留学プログラムに行っていたのですが、現地である映画を見ていないという理由で失望されまして、芸術性があってトレンドの作品を見ることができないのは、文化的にものすごい損失だなと思ったんです。その作品は3年後に岩波ホールで上映され、僕も何回か見に行ったのですが常に満席でした。これは、とてもうれしいことではあるけれども、むしろ上映までにかかった2~3年間を短縮する仕組みが必要だと考えるべきではないのかと思えてきて。 そこで“先にお金を集めて損益分岐をクリアできたらやろう”という仕組みを作りたいと考えたのが事業を立ち上げた理由です。最近は忙しくてあまり映画を見られてないんですけど、『ドント・ルック・アップ』『偶然と想像』『ドライブ・マイ・カー』は面白かったですね」