平野レミ「みんな“ベロつながり”でつながっていく」最新エッセイで語る子育て、料理、家族
樹里ちゃんの料理もあーちゃんの料理も味つけの根本的なところは私に似ている
47のオリジナルレシピはユニークなアイデア料理ばかり。レミさんのお料理のアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか。
「いろんなスパイスを買ってきて、レシピ本を見ないで自分で考えて料理を作るのが大好きなの。ふと気がつくと“今日は一日中キッチンから出てなかった”っていう日があるくらい、本当に好きなんですよね。できあいの料理を食べても、すぐ“ちょっと違うな”“私だったらこうするのにな”と思っちゃって、自分で考えて作ったほうが絶対においしい。盛りつけも“立体的にしたほうがテーブルが華やかになるな”とか、“エヘヘって笑えるような名前をつけよう”とか、そういうことを考えるのは昔から好きでした。
最近は発酵食品が気に入っていて、本の中でも紹介した〈高菜がゆ〉は高菜漬けと豚肉を油で炒めて、そこに水を入れてコトコト煮るだけ。高菜からどんどんいい味が出てくるから、調味料は何にもいりません。そこにご飯を入れておかゆにして、最後に卵を入れるとすごくおいしいんですよ」
立体的といえば「まるごとブロッコリーのたらこソース」もずいぶん話題になりました。
「あれは生放送で作ったんだけど、“ハイ、できました!”って言ったらブロッコリーが倒れて、“これは面白い”ってみんなが喜んじゃって、その日はスーパーでブロッコリーが売り切れちゃったんだから(笑)。結局、みんな楽しい料理が好きなのよね。あの立たせたブロッコリーだって、みんなでナイフとフォークで切り分けて、“最初に倒した人が罰ゲーム”とか言いながらゲーム感覚で食べると楽しいわよ。料理で遊ぶなっていう人もいるけど、結局、遊びながら全部食べちゃうのよ。食卓は和気あいあいと楽しくなきゃあね。誰かに迷惑をかけるわけじゃないし、家庭の中で楽しくやる分には何やってもいいじゃない」
いつも本当に元気なイメージのレミさんですが、毎日元気で楽しく過ごすコツを教えてください。
「嫌な人とは付き合わないこととよく寝ることが大事。嫌なことがあったらワインを飲んですぐ寝ちゃいます。シチューやカレーもそうだけど、その日に作ったものは味がとがっていても、ひと晩寝かせるとマイルドになっているでしょう。人間だってカーッと頭に血が昇っても、ワインを飲んでひと晩寝るだけで“昨日のことは何でもなかったな”と心持ちがマイルドになる。時間は大切な調味料で、時間が経てば何てことなくなっちゃうのよ。
悲しいことだってみんな時間が解決してくれるもの。私も和田さんがいなくなってもうすぐ3年経ちますが、毎日毎日本当に悲しかったけど、こうやって元気で生きているってことは時間が薬になってだんだん元気になってきたんじゃない? いなくなっちゃったものは仕方ないと自分に言い聞かせるしかないけど、私には和田さんの血が半分入っている息子たちがいるから、心を落ち着けて仲よくしています。
最近はうちにみんなが集まって、3家族の料理の食べ比べをしたり。私が息子たちに料理を作っていたからなのか、不思議だけど樹里ちゃんの料理もあーちゃんの料理も味つけの根本的なところは私に似ているの。だから、どの料理もみんなおいしい。そうやってみんな“ベロつながり”で、ずっとつながっていくのでしょうね、きっと」
この本を読んで改めて家族っていいな、家族で過ごす時間を大切にしたいなと思いました。これから本を読む人にレミさんから伝えたいメッセージはありますか。
「とりあえずちゃんと料理を作って、元気に笑って子どもを送り出していれば大丈夫。愛情を持ってやさしく、一生懸命ご飯を作っていれば、子どもはお母さんのことをしっかり見ています。お母さんも仕事があって大変かもしれないけど、慣れれば何でもないことだし、手作りのものだったら何だっていいの。面倒くさい時は、いろんなものを別々に冷凍しておくといいですよ。その日の気分で、鍋に冷凍したねぎやしいたけ、うどん、出汁を入れてコトコト煮れば、それだけでもうおいしいうどんができちゃうんだから。それでも面倒くさい人は私の本を見て作ってみてちょうだい(笑)」
(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)