桂雀々、高知東生、東ちづる、おおたわ史絵「依存症と家族」テーマに赤裸々トーク
東京・千代田区のイイノホールにて26日、「依存症の正しい理解を深める落語とトークライブ」が行われ、落語家の桂雀々、俳優の高知東生、東ちづる、医師のおおたわ史絵らが登壇した。
イベントは、雀々による博打打ちの幽霊が出てくる落語「へっつい幽霊」でスタート。終演後に雀々は自身の父親がギャンブル依存症で、母親が小学6年生、父親が中学生の頃に失踪したことを告白。「母子家庭、父子家庭ではなく子家庭になってしまった。親父が残した借金で夜中に闇金融の人たちが現れ、とにかく夜中はにぎやかでした。怖い人だったんですが、目がいい人だったのでしがみついて“助けてください”と言ったら、助けてくれた」と壮絶な過去を語った。
その後、東とおおたわを交えて「依存症家族の正しい対応と回復」をテーマにトーク。父親がアルコール依存症だったという東は「暴れるわけでも、異性と遊ぶわけでもギャンブルをするわけでもなく、淡々とニコニコしながら飲んでいたのでまったく気づかなかった。ある日突然、静脈瘤破裂で吐血して、そこで初めてお酒がやめられない人だと分かった」と振り返る。
「うちのお酒をなくすのはもちろん、外で飲まないように見張りもしたが今度は隠れて飲むようになってしまう。本人も“やめたいんだ”と言うんですけど、“じゃあやめようよ”“やめられないんだよ”“そんなのおかしいよ”という会話が延々ありまして、結局精神的に弱いんじゃないか、逃げているんじゃないかという精神論・根性論になってしまった。責めてしまったあとは“ああ、嫌なこと言っちゃった”と自分も辛いし、地獄でした」と悔やんだ。
15年の闘病の末に父親を亡くした東は「グリーフケアといって遺族としての悲しみや苦悩からどう這い上がるかは、本を読んだりしていろいろな段階があることを知り、そこからすごく救われました。お墓に向かっていくら“ごめんね、ありがとう”と言っても届かない。私だけでなく母にも知ってほしくて、生きている家族が知ることから(グリーフケアを)始めることにつながった」と経験を語った。
母親が薬物依存症というおおたわは「逮捕される薬とは違うんですが、違法であれ合法であれ薬物依存というのは同じ構造を持っています」と語り「おかしいんじゃないかと気づいたのは中学生の時。父親が医師で家に注射薬と注射器があったんですが、元ナースだった母にとって自分で打つことができるという悪い環境が揃っていた。医学部5年生で病院実習があって、すごく厳重に管理された注射薬のアンプルが母親の打っているものと同じことを知って“うちの母親は薬物依存症なんだ”と初めて気づきました」と明かす。
おおたわが「渦中にある家族は一番問題に気づくのが遅い。家族というのは実は治療者としても不適格で、一番愛しているはずなのに一番治すことを邪魔してしまうのが家族だったりするんです」と述べると、東も「父が亡くなったあと、仕事仲間の人たちが先に(依存症に)気がついていたことが分かったんです。小さな会社を立ち上げて仕事にまい進していたので、私たちは“お酒くらいはいいじゃん”と思っていた」とうなずく。その後、おおたわは竹村道夫医師のもとで家族のための治療プログラムを受け「そこですべてが変わりました。母が劇的に良くなったわけではないんですけど、私の生き方やものの感じ方、考え方が180度近く変わってものすごく楽になりました」という。