「頑張る北乃きい」という明るさはいつでも出せるけど…「30代はありのままの自分を織り交ぜていきたい」
強く、明るく、元気。それがこれまでの“北乃きい”だった
そんな北乃もまた、10代から数々の作品で素晴らしい俳優たちと現場をともにし、多くを学んできたと言う。
「私は兄弟が11人いるんですが、人と比べられるということがありませんでした。この業界に入って初めて、人と比較されるという経験をしたんです。早くから1人暮らしを始め、最初はきつかったですけど、他の女優さんにできるなら自分にもきっとできる、と思ってやってきました。でもさすがに男優さんにはなれないので、尊敬できる男性の俳優さんに出会うと悔しくて、ついライバル心が…(笑)。圧倒された俳優さんは数限りなくいます。ドラマ『太陽と海の教室』で、織田裕二さんが先生役、私は生徒役だったのですが、織田さんは、現場に来ても一切、台本を開かないんです。全部、頭に入っているからと。私は、当然、台本全部は頭に入ってない。生徒一人ひとりの目を見て心から話しかける姿に圧倒されたのを覚えています。主役のあり方を教わったと思います」
今回、撮影に入る前、本読みの際に北乃も台本を開かなかったとか。
「私なりに、少しでも現場の士気を高めることができればと思い、セリフをすべて頭に入れ、本読みに臨みました。意識はしていませんでしたが、先輩方の主役を務める姿勢が、自分の中にも根付いていたのかもしれません」
連ドラの主演である今回、撮影はほぼ出ずっぱり、一人二役という難役に加えセリフ量も多いというハードな撮影だったが、むしろそれを楽しんでいる様子。
「少し前のドラマの現場ってこんな感じだったな…と懐かしく思いました(笑)。学生時代に連ドラに出演させていただいていたときは、文字通り寝る間も無くて、テレビ局で仮眠をとっていたときもありました(笑)。今回は、台本を確認する間もないくらい矢継ぎ早に撮影をこなすスケジュールではあったのですが、キャストスタッフが一丸となって乗り越えることができましたし、きちんと寝る時間も頂いたので(笑)本当に楽しく充実した現場でした」
北乃が女優としてのキャリアをスタートさせた当時、まだ“昔気質”な現場も少なくなかった。
「そのころはまだフィルムで撮影する現場もあって、私も、フィルムをムダにできないという、今とはまた違う緊張感を常に感じていました。今では考えられないようなハードさでしたけど、本当にたくさんのことを学びましたし、楽しかったです。あの時代を経験していて良かったと思います。そのころ身についた感覚は今も残っていて、常に一発でOK出せるようにという心構えでカメラの前に立つことができています」
14歳で、女優としてのキャリアをドラマからスタートさせた北乃。初めてのチームとの仕事でも「ドラマの現場に立つと“ホーム”だと感じるんです」と笑顔。今回は、引っ込み思案なOLと、見事なおじさんっぷり…1つのドラマでいくつもの表情を見せてくれた。
「10代、20代のころは“元気で明るい”というイメージを求められていた気がします。今でも、そのときどきで求められる“北乃きい”を出していくことは意識しています。ただ最近プライベートの“私”を知る人たちから、素の性格をほめてもらえたりするので(笑)、これからの30代は“素の私”を織り交ぜつつ(笑)、女優としても進化していきたいと思っています」
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)