じわじわくる猫絵本『ねこいる!』が話題!たなかひかるの頭の中をババーンとのぞいてみた

猫の魅力を「かわいい仕草を全部無表情でやっているのがたまらなくかわいい」と語るたなかさん

『ねこいる!』は変なところから猫を出す“出し方大喜利”

 最新作『ねこいる!』は猫がババーンと出てくるだけのシンプルな絵本ですが、自由すぎる挙動や怒涛の展開で一気に読んでしまい、何度も読み返したくなります。こうした発想はどこから出てくるのでしょうか。

「言ってみれば変なところから猫を出す“出し方大喜利”ですよね(笑)。お笑いって簡単に言うとフリとボケとツッコミがあって、フリは作り上げる作業でボケはそれをぶっ壊す作業、そこに“壊すなや!”とツッコむ人がいる。ボケというのはクラッシャーで、常に常識を壊したい、常識を無視したいという欲求があります。今回で言うと猫のサイズ感は何の説明もなく無視しました。

 最後の仕掛けに気がついた時にびっくりしてもらえるように、色にもこだわってデザイナーさんに何回もギリギリのラインを試してもらいました。“ずっとここにいたんや”というジャパニーズホラーのような怖さってあるじゃないですか(注:怖くはありません)。デザイナーさんも『ねこいる!』の世界観を楽しんでやってくれはったのかなと思います。

 ほかにもデザイナーさんの提案で、カバーに透明な猫(UVニス加工)が隠れていて、SNSでもこの猫に触れてくれた読者の方がいらっしゃいました。紙の絵本だと元のページに戻りやすいので、何度も読み返してくださるとうれしいです」

 たなかさん自身がお気に入りのページは?

「フランスパンから出てくるところですかね。猫が入れるスペースがあると思うとちょっとかわいく思えるんですよ。こいつがいるということは、入っている空間があるということなので、そこがかわいいんですよね。

 描いていて楽しかったのは(ページをめくりながら)リコーダーから出てくるところですね。指にぐにゅってなっている猫の質感を出すのが楽しかったです。跳び箱のページも、最初はもっと出てくる数が多かったんですけど、“ちょっとゾワっとする”という意見があって間引きました」

 ご自宅でも猫を飼っているたなかさん。猫のかわいいところは?

「うちに猫が入れるフェルトの丸い猫ハウスがあるんですけど、そこから首だけピュッと出して、そういうかわいい仕草を全部無表情でやっているのがたまらなくかわいかったりします(笑)。猫とか犬って冗談が通じないじゃないですか。こっちが勝手にかわいいと言ってるだけなんですけど、何をやるにも真剣に取り組んでいるところがかわいい。だから『ねこいる!』の猫も全部無表情に描いています。猫の目とかぷくぷくのひげ袋は描いていてもかわいいですよね」