じわじわくる猫絵本『ねこいる!』が話題!たなかひかるの頭の中をババーンとのぞいてみた

ねこいる! ババババババババーン(本文より)

デジタルであたたかみのあるタッチを出すための衝撃の工夫

 小さい頃から絵本好きということで、たなかさんのおすすめの絵本を教えてください。

「絵本はむちゃくちゃ読んでもらったし、読んでました。かこさとしさんの『からすのパンやさん』は、コミュニケーションのツールとして“あんなパン、こんなパン”というのを親や兄弟としゃべるのが楽しくて。漫画や小説はほとんどひとりで読むものですが、絵本だけはみんなで読んで楽しめるものという気がします。

 長新太さんの『チョコレートパン』はチョコレートの池にパンやゾウ、自動車が入っていくのが積み重なるだけなんですけど、終わり方が“どっから思いついたんやろ”という感じで衝撃を受けました。長さんの作品は小さい頃から“何でそうなるんだろう”と気になっていて、大人になってから買い直したりしています。ジャズピアニストの山下洋輔さんと元永定正さんの『もけらもけら』も割と大人になってから買いました。

 民話がベースの『ちからたろう』は、僕は今江祥智さんと田島征三さんのバージョンしか知らないんですけど、今見ても線が力強くて、めちゃくちゃかっこいい絵ですよね。昔の民話ってありえへんことを普通にするのですが、今はお笑いや漫画でもなかなかそれができなくて、絵本ってそういうところの自由さがええなと思います」

『ねこいる!』は発売2週間で重版がかかり、売れ行きもとても好調だそうですね。

「そういう意味ではタイトルで買ってみて、ちゃんと猫がいるという何の期待も裏切らない絵本です(笑)。子どもたちは楽しんで読んでくれて、柔軟な大人の人にも喜んでもらえるかなと思います。意外と大人の人も興味を持ってくれてるみたいで、エゴサーチすると“子どもに買って与えたらお腹がよじれるくらい笑ってました”というコメントがあったのはうれしかったですね」

 絵はデジタルで描いているそうですが、何かこだわりはありますか?

「『ねこいる!』ではより汚い線が描けるように、何種類かの形を連続で出せるように自分で設定していて、よく見ると線の中にどこかの都道府県や星、木などいろいろな形を織り交ぜています。漫画を描いてるツールでそのまま作っているのですが、紙に描くと自然に線がにじんだりするんですけど、デジタルだとタッチがきれい過ぎるのが個人的にあんまり好きじゃなくて。線のあたたかみが出ないので、頑張ってより汚い線を引こうという謎の努力をしています(笑)」

 最後にたなかさんから読者にメッセージをお願いします。

「お子さんとのコミュニケーションツールとして、“こんなところにもいる!”とか言いながら笑ってもらえたらうれしいです。それが子どもにとって大事な思い出になって大人になっても残っていたりする。自分も絵本が大好きだったので、そういう経験から絵本っていうものを好きになってもらえるとうれしいです」

(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)