レジェンド芸人「おぼん・こぼん」が語る2人の絆「だから一緒にやってきた」
1+1は普通は2になるんだけど、おぼん・こぼんは3や4、5になる
人間関係は近づいても遠すぎても難しいものです。お2人がこの仲直りを通して得られたものは何だったのでしょうか。
こぼん「まぁ、ぶっちゃけて言うとこの本がそうですよね(笑)。とはいえ、2~3年もネタにできるものじゃないですから、いつまでもそれを引きずっててもしようがないかなとは思いますけど」
おぼん「お客さんにウケる時はネタにしたほうが俺たちも得だし、そのほうが喜んでもらえるからどうしてもネタにはしちゃうけど。今はこんな時期で仕事も少ないから、特に環境が変わったということもないかな」
こぼん「もちろんちょこちょこ仕事は増えてますけど、急にドッと増えたとかそういうわけではないんです。社会全体がそうだからとやかくは言えませんけどね」
おぼん「この3年間、営業とか人の集まるところはまったくだめで、増えたのは取材ばっかり(笑)。俺らの歳になったら一年一年が大事じゃないですか。新型コロナで3年間も無駄になってしまって、本当に返してくれよと言いたいくらい」
57年間、紆余曲折ありながらもコンビでお笑いを続けられた原動力は何だと思いますか。
おぼん「一番は人を笑わすのが好きだから。音楽が好き、楽器が好き、芝居も好きだし、ショービジネスにかかわるものはすべて好きなんだけど、やっぱり人を笑わすのが一番特別かな」
こぼん「やっぱり芸事が好きだから舞台に立っていられるんです。僕は小学校の頃から何とかして漫才師になりたくて、中卒で弟子入りするって決めてたからね。なかなか弟子入りできなくて、結局、高校に行きながら演芸場に出入りさせてもらって……」
その大阪福島商業(現・履正社)高校時代におぼんさんとの出会いがあります。
こぼん「振り返ってみると、ここまでやってきちゃったんだなと思います。挫折したことや辞めようと思ったことは何回もありますよ、そりゃあ。それはどんな方でも同じだと思いますけど、結果としてそれでもやってきちゃった」
おぼん「いやらしい話だけど、やっぱりおぼん・こぼんでコンビを組んでいたらお金になりますもん。ならなかったらとっくに別れてると思いますよ(笑)。最終的には好きなことをしながら、まとまったお金がもらえるのは大きいですよ」
こぼん「ずっと2人でいちゃったから。『赤坂コルドンブルー』も『お笑いスター誕生!!』も営業も、ピンでやるより2人でやったほうが圧倒的にウケがよかった」
おぼん「おぼん・こぼんにはピンでやる技量がなかったんだと思う。あったら(ビート)たけしみたいにパッと1人でやってると思うんですよ。俺たちは目標が一緒だし、好きなことも一緒だし、1+1は普通は2になるんだけど、おぼん・こぼんは3や4、ある時は5にもなる。だから別れないで一緒にやってきたんだと思いますよ」
これから『東京漫才』を手に取るファンの方にメッセージをお願いします。
こぼん「この本は教科書でもないし、バイブルでもないからね(笑)。こういう生き方をしてきた人たちがいるんだなと思ってくれればそれでいいかな。僕たちは漫才とタップと音楽、そういうスタイルしか多分できないと思うんだけど、それはこれからも続けていきたいですよね」
おぼん「とはいえ俺たちは演者だから、お客さんが本当に喜んでくれてるかどうかというのはいまだに半信半疑で演じているわけですよ。何でもそうだけど、俺らの世界でも空気感が読めるかどうかは経験以外にないからね」
こぼん「僕たちだってやりづらい仕事はありますよ。立食パーティーで乾杯が終わった直後に“どうぞ~”と言われて、目の前で名刺交換してるのにやらなきゃいけないとか。呼ばなきゃいいのにね(笑)。そういうことも含めていろんな面白い経験をしてきましたよね」
古き良き時代のエンターテインメントを体現する芸人。おぼん・こぼんは今日も明日も舞台に立っている--。
(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)