海外ブランドも注目。時代に合わせ進化する伝統工芸「こぎん刺し」の世界
髙木裕子さん。講師を務める東京・人形町の教室「こぎん刺し教室木曜会」にて。
進化するこぎん刺し
「こぎん刺しはますます進化しています」。そう話すのは、同展を主催する悠美会の会長・髙木裕子さん。東京で暮らしていた髙木さんは、今から50数年前の青森旅行がきっかけで、こぎん刺しの魅力に触れた。「たまたま見つけたこぎん刺しの模様が美しくて、感動しました。これが廃れてしまうのはもったいない」と、都内に戻ってから独学で勉強を開始。試行錯誤の後、講座に通うなどして本格的に技術を磨き、一から図面を作るようにもなった。それから約50年間は講師として教室を開き、「こぎん刺し木曜会」主宰として多くの生徒を抱える。
海外での発見もあった。NHK文化センターの講師として赴いた欧米の美術館では、カラフルな西洋絵画の数々を目にすることで、新たな着想を得た。従来のこぎん刺しは紺の布に白綿糸で刺したシンプルなものだが、髙木さんの作品は色鮮やかなカラーが特徴だ。布に合った色糸をオリジナルで作るといい、その数は数百にも上る。さらに、作品には色染めから8年ほど寝かせた糸を使うといい、「しっかり染み込んだ色糸を使うことで、作品が色褪せないようになる。長年の経験です」と、こだわりを明かした。