廃棄される花を再利用、花からバイオマス燃料を作って事業化! 学生ビジネスコンテストでサステナブルな新規事業アイデア
企業とのブラッシュアップで、より現実的なビジネス案に
『キクのフラワーロスの解決案』は、最終的に『“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』として発表。花きの国内消費の約40%にあたるというキクが他の花に比べて再利用されていないことに着目し、出荷時に切除される茎部分などを回収し、バイオエタノールを作るというアイデア。まだ生産に多くの石油燃料が使われている花き業界のカーボンニュートラル促進に貢献しつつ、石油燃料コストの削減も狙った。
実際にキクからバイオエタノールを生成することも視野に入れて練り上げるなかで、含水率が少ないキクはペレットの素材として適合性が高い可能性に気づき、バイオエタノールからペレット化に案を変更。しかも通常、草本系バイオマスは燃焼灰が発生するが、キクと近い植物は燃焼灰が比較的少ないことも発見。現段階で実際に生成する場合、一般的なエタノールよりコストが大きいが、生産体制が整えば、キクは食糧との競合もなくバイオマス化でき、フラワーロス問題に貢献しつつ、生成されたバイオマス燃料を使用することで石油燃料の使用削減にも期待できる」とした。
発案者の三野さんは代替タンパク質としてのコオロギの研究、高木さんはAIを使った材料開発の研究に従事。「自分の普段の研究とは直接的につながるテーマではありませんでしたが、大きな社会課題に対し研究をどう生かしていくかという姿勢において大変よい経験になりました」と振り返った2人。高木さんは「コンテストでグランプリを頂いたときは、すぐにでも事業化できるアイデアなのではと思いましたが(笑)、実際に企業の担当者さんとのディスカッションを重ねる中で、技術的な課題や収益化など現実的な課題がどんどん見えてきた」と言い、三野さんも「研究者として、自分の研究が面白いことも大事だが、それが社会にどう貢献できるのか、社会実装するためにはどうしたらいいのかという視点も必要なのだと改めて感じました」と振り返った。
プロジェクトを監修した早稲田大学教授・グローバル科学知融合研究所代表の朝日透教授は「学生のビジネスアイデアコンテストにおいて、その後に企業が長期間、アイデアのフォローアップにまで携わってくれるのはなかなか無いこと。学生の皆さんにとっても非常に貴重な経験となったと思います。ぜひ起業や新規事業によらずさまざまな場で生かしてほしい」と期待を寄せ、花キューピット株式会社の𠮷川代表取締役も「非常に楽しかった。『Flower Compost 花から始まる循環型社会』は花のリユースに加え、仮想現実が広まるなかで、花を通して命を感じてもらうという意味で意義のあるアイデア。『“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』は、現実的に多くの業界が石油のコスト問題に直面しており、非常にリアリティーのあるアイデア。このまま詰めていけば現実的な事業になるのではないかと思える」と高く評価していた。
後編では、学生とともにビジネスモデルを作り上げる意義について、花キューピット株式会社の𠮷川代表取締役ら企業サイドを取材。SDGsの視点を備えた新たなビジネスモデルの芽を探るべく、若い才能とアイデアに大きな期待を寄せる企業の思いを聞く。
プロジェクトの様子をまとめた動画を公式ページにて公開中。
【プロジェクト映像】https://www.hanacupid.or.jp/news/sdgs/1520/
※文中の学年は当時
花キューピット株式会社の𠮷川登代表取締役が最終発表を終えた2チームに花束贈呈