50代で博士課程へ…いとうまい子が「学び」を求めた理由【対談】いとうまい子/早稲田大学理工学術院長・菅野重樹教授

女優・タレントとして芸能活動を続けながら40代で早稲田大学のeスクールに入学し、大学院博士課程を経て研究者となったいとうまい子と、ロボット工学の第一人者であり、早稲田大学理工学術院長として広い視野で教育・人材育成をリードする菅野重樹教授。2人が語る、これからの「学び」に必要な視点とは。

撮影・小野田尚武

ーまず、お2人が現在の専門に至った背景を聞かせてください。

菅野重樹教授(以下:菅野)「私はもともとSFやロボットが好きな子どもだったんですが、中学3年のころ、加藤一郎先生が開発したヒューマノイドロボット〈WABOT-1〉のことを新聞で読み、人間に近いロボットを研究する加藤先生のもとで学びたいと、先生のいる早稲田大学に進学しました。実は大学に入って間もなく、アポも取らず加藤先生のもとを訪ねて行きまして…。先生は出張でおられなかったのですが、そのことが先生に伝わり“この日にいらっしゃい”と伝言を頂いた。今考えると、あんな大先生のところによくいきなり訪ねていったものだと思います(笑)。後日、改めて加藤先生にお話を伺うことができ、これはもう絶対に加藤研に行くしかない、と。運よく研究室に入ることが出来て、つくば科学博(国際科学技術博覧会)に出展した鍵盤演奏ロボット(WABOT-2)の開発にも参加しました。その後も、バイオメカニズムの視点をふまえ、人間と共存するロボットの研究を続けてきました」

いとうまい子(以下:いとう)「私は10代から芸能界で仕事をしてきましたが、紆余曲折ありながらも、この不安定な業界で仕事を続けられてきたのは、この社会のおかげなんだと、40代に入って改めて感じるようになったんです。番組や作品を作る人、スポンサー、作品を見てくれる方々…すべての人のおかげで生活できているのだから、社会に対して恩返しをしたいと思うようになりました。でも高校を卒業してすぐにこの世界に入ったので何も知らなかった。それで、まずは恩返しの土台を大学に行って見つけよう、と。あれこれ探したところ早稲田大学のeスクールでいろいろな領域を学べると分かり、もともと興味があった予防医学やロボット工学を受講しました」

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