5月30日に初防衛戦のWBO女子Sフライ級王者・吉田実代「“女子ボクシングも面白いな”と思われるような試合をする。生で見てほしい」

(撮影・蔦野裕)

ボクシングをやっている時はすべてを忘れられる。無でいられる

 できればコンスタントに試合をしたいタイプ?
「半年に1回は試合をしたいと思っています」

 それはやはりボクシングが好きだから?
「好きですし、やっていたほうがモチベーションも上がるので。前は3カ月に1回だったので年に3~4試合というのはきつかった部分もあるんですが、やろうと思えばやれるタイプだし、決まればやるだけなんで。それに試合が決まっているほうがモチベーションは上がりやすいのかもしれないです。ただ、年々大人になってきているので自分の足りない部分も分かってきて、一戦の重みもこの前の負けでまたよく分かったところもあるので、試合をするにあたってはしっかり仕上げたいなと思っていて、まだまだ足りないところは多いので質を上げた練習をしたいと思っています」

 そこまで吉田選手を駆り立てるボクシングの魅力って?
「すべてを忘れられます、ボクシングをやっている時は。いろいろ考えなければいけないことって世の中にはいっぱいあるじゃないですか。生きているとみんなそうだと思うんですが。でもボクシングってボケっとしていたら、殴られてケガして、下手したら死んじゃうかもしれない。大げさに言うわけではないですが、生と死がダイレクトに直結している。その競技に、生きている感覚を覚えるというか、その時だけは無でいられる。あれはこうしなきゃ、人生はこうしないと、娘のことは将来こうしないと、といったことはもちろん毎日考えているんですよ。なにも考えてないように見えて、めちゃくちゃ考えているタイプだからこそ、何も考えない時間が欲しくて。最近は多分ボクシングじゃないとそういう時間が作れない気がします。切り替えというかメリハリですね」

 ボクシングは自分の人生に必要なものになっている?
「そうですね。みんながゲームが好きだったり、遊びに行くのが好きだったり、というのを私はボクシングに充てているという感じなんです」

 では辞められないですね?
「いきなりケガするとか、事故でボクシングができない体になってしまうとか、そういうことのほうが怖いなって。でも確実に引退は近づいているので“あの時にやっておけばよかった”という悔いだけは残さないようにしたいなって思っています。モチベーションが落ちたり、燃え尽き症候群になった時もあったんですが、負けを知ったり、ジムを移籍して、いろいろな人たちの刺激を受けて、すごく充実した最終章に入ってきているのかな。今一番充実したボクシング人生を過ごせているかなと思っています」