今年も開催!ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2022に、なんと“AIが脚本した映画”が登場!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 5月14日にいしだ壱成さんとトークショーをやってきました。久しぶりに会えて話せて、うれしかったです。会場、そして配信でご覧いただいた皆様、楽しんでいただけましたでしょうか? 僕らは十分楽しませていただきました。またこういった機会があればと思います。

 今週は6月7日から始まる「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2022」の作品について書かせてもらいます。では始めましょう。

渡辺裕子監督作『少年、なにかが発芽する』

『少年、なにかが発芽する』この作品タイトル自体も“AIが生成したト書き”の1文からとったそうなんですが…もう、その時点ですげぇ面白そうじゃん!!

「フルコト」という“ストーリー生成AI”で書かれた脚本をもとに制作された短編映画で「トマト嫌いの少年が母親に無理やりトマトを食べさせられたら、背中からなにかが発芽しちゃう」という物語。
 えっと…AIって、もう「食べ物の好き嫌い」とか「親子の関係」とかまで理解しているんですか……。
 食べ物の味なんて知らないだろうし、“人間関係”なんてそれこそ一番遠い存在なはずなのに、凄く良く書けてるの。
 多少不条理なところは存在するし、かなり監督(人間)の手も入って仕上げてあるので“どこまでがAIの仕業か”は、ハッキリとしていませんが、もっとこう

「ガー…ガガー…ピー
 ニンゲン…ハイジョスル……」

 みたいなの想像しません!?

 とても文学的な描写が多く、なんならタイトル中の“なにか”は、実際少年の背中に生えた芽以外の“なにか”を暗喩しているようでもあり、そこまで機械にできちゃうようになったら、人間の物書きはどうしたらいいんだろう!

 監督(人間)の手の部分は、そもそも“AIってどんな話を書くの?”という視点と、ストーリー自体の奥行と難解さで、観客が2つの視点を持って観ることになるところを、情報過多にさせすぎないよう、非常にシンプルで美しい画を淡々と撮り続けているところが、とても素晴らしかったです。

 あまりカメラを動かさず、カット割りも最小限で“ずっと観ていられる映像”って、作るの凄く難しいんですよ。

 でも、この作品に関しては絶対に、カメラ動かしまくってカット割りまくったら、情報過多を超えてとてもダサい「どう? AIってこんな脚本かけるんだぜニンゲンドモ…!」って雰囲気になってしまっていたと思います。

 まるで写真集を1ページずつゆっくりめくるような、AI要素を忘れて、純粋に映画としてみても、とても素敵な作品でした。

 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2022オンライン会場のオープニング作品として世界配信されるそうなので、是非ご注目下さい!

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