平良達郎22歳 UFCデビュー戦で快勝も「20歳過ぎてから思っているほど“時間がない”という気持ちが大きいんです」

「午の印」のポーズをする平良

次の海外トレーニングの地は「タイガームエタイなのかな」

 UFCフェザー級チャンプのアレクサンダー・ヴォルカノフスキ選手も、何年もタイガームエタイで練習していますよね。ヤン選手ともスパーリングしていますし。ちなみにヤン選手は試合前にアメリカに入ってからはアメリカン・トップ・チーム(ATT)でトレーニングしています。前回はセコンドにATTのマルコス・ダ・マッタさんがついていました。
「実は“どこに行きたいかな?”って考えたときに、ATTに行ってみたいとも思っていました。ただ(対戦したい相手として名前を挙げていた)ムハマド・モカエフが今ATT所属になったということを知って、そう思うと“あんまり行きたくないな”って。戦うかもしれないからやりづらいかも?と。それだったら、次の試合もまだいつになるか分からないし、日本からの距離的にもプーケットのほうが近いですし、タイガームエタイなのかなと。とにかく海外で練習することは必要だなって思っています」

 その必要性という点については、アメリカで練習してみたことはもちろん、このデビュー戦で、先ほどおっしゃったような5分3R、フルで戦ってみた実戦の経験を通して、よりその思いが強くなったのでしょうか?
「沖縄を出るという意味では、それがアメリカでも千葉でも同様なのですけれど、新しい練習をしていくとやっぱり外に行くたびに課題が見つかるんです。レスリングの対応であるとか、寝技でも上のほうが僕は得意ですし、逃げより攻撃のほうが得意だとか、自分の中に長所と短所があります。打撃、組み・レスリング、寝技と、それぞれにここを強化したいというポイントがあるから“考えてみたら全部だった”という。同じ環境でずっとやっている積み上げも大切だと思うのですが、新しい刺激も必要だと感じました。というのも、自分としては思っているほど“時間がない”という気持ちが大きいんです。20歳過ぎてから、本当に年を取るのが早いなって。20歳になったときから、今も自分は……、何て言うんですかね……、“もう22歳”っていう感じなんです」

 事実だけを並べてしまえば平良選手は現在のフライ級で最年少。UFC全体でも3番目に若く、文字通りの「ヤング・プロスペクト」ですが、おっしゃっている焦燥感のようなものはどこから来るのでしょうか?
「その、プロスペクトであったり、『超新星』とメディアに書かれたりすることもそうなんですけど、人から年齢を“21歳”とひとつ間違えられて言われたりするだけで“もう22歳なんだけどな……。……もう22歳なのか!”ってなっちゃうんです。ここ最近ずっと思っているのは、僕にはバックボーンがないので、レスリングやボクシングといったいろいろなバックボーンがある選手と対峙して、そこで勝ち抜いていくためにはもっと急がなくてはといけない、と」

 同級生が学生生活をエンジョイしたり、就職活動している最中、平良選手はすでに格闘技の道で日本の頂点に立ち、さらに世界の頂きを目指すところまで上がってきていた。先ほどおっしゃった「もっと急がなくては」という気持ちもそうですが、これから社会人になっていく周りの子と比べて、随分と大人の階段を早く上っている感じがしませんか?
「いえ。松根さんや岡田さんと一緒にいると子ども扱いをされているので。年上の方との時間が長いことで“俺って子どもなんだな”なんて逆に思ってしまったりしてます(笑)。そういう意味では、周りにいる昔からの友人が就職するのを見たりすることで、等身大で“早いな”とも感じますし“みんなそうなんだよな”って思えました。“自分は、格闘技に就職したんだ”と実感しています」

(取材・ユカワユウコ)

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