シニアはどう見た?“75歳から生死を選べる制度”描くカンヌ受賞作『PLAN 75』
今年75歳になったという女性から、この作品を作った背景を聞かれると、早川監督は「ここ何年かの間に“自己責任”という言葉が増えて社会的に弱い立場の人への風当たりが強くなり、著名人や政治家からの差別的な言葉にも憤りを感じていた」と振り返り「私は子供のころ、長生きするのはいいことだと、お年寄りを敬う気持ちを教えられてきたのに、ここ数年、メディアも介護やお金の不安をあおるばかり。その不安の矛先が、政府ではなくお年寄りに向かい、若い世代との分断も感じている。このままいけばどうなるのか…と、問題提起の意味もありました」と作品へ込めた思いを明かした。
「なぜ75歳からという設定にしたのか」という質問には、「あるときから75歳以上は後期高齢者と名付けられました。その言葉を聞いたとき、人生の最後の最後と言われているような、いやな気持ちになった。人によって違うのに、一律に国が年齢で区切ることにも違和感があり、あえてその年齢に設定しました」と語り、うなずく参加者の姿も。
母親の介護経験を振り返り「母もよく死を口にしていた。もし制度が本当にあって、家族が納得したら、私は賛成していたと思う」と言う女性や、「お嫁さんや孫たちに迷惑かけたくないからもし何かあっても…と思っていたが、私がこの制度を選択したら、息子たちは許さないかなとも思う。実現したら恐ろしい世界だなと思った。家に帰ってよく考えてみたい」と揺れ動く心情を明かした女性、単身で実家に戻り母親の介護した経験を振り返りながら過剰な延命治療に疑問を呈した男性など、架空の制度ながら、参加者にとっては自分事として考えるきっかけとなった様子。
早川監督も「正解は無く、それぞれが心揺れながらも何かを感じてもらえたら」と参加者に感謝していた。
映画『PLAN 75』は6月17日より公開。