伊藤健太郎の“帰る場所”…「ファンの皆様へ届けたい」と自ら作った芝居の場「涙が止まらなかった」

「人って温かいんだな、と思いました」と、自身が企画から携わったショートフィルム『お帰りなさい』について語る伊藤健太郎。一度、つまずきながらも人の温かさに触れ再び前を向く大学生という役どころを通して再確認した、俳優・伊藤健太郎の“帰る場所”とは…。

撮影・蔦野裕

ファンの声に応えたい…企画から作り上げたショートフィルム

 プロのバスケットボール選手を目指していたが、トライアウトを機に挫折してしまった大学生・雄大は、青森県つがる市で一人暮らしの祖母キク(大方斐紗子)の家を訪れる。津軽の冬の厳しい寒さの中、キクや近所の人々の温かさに触れ、心がほぐれていく雄大だったが、あるときキクの目がほとんど見えてないことに気づいてしまう…。

 今回、マネジャーも伴わず単身でロケ地に赴いたという伊藤。背景には、自ら企画から作り上げた作品という気合もあった。昨年、オフィシャルファンクラブを開設。その中で、伊藤の芝居を望むファンの声がきっかけとなり、ショートフィルムを企画。脚本を募集し、『デンデラ』(2011)や『おしん』(2013)で助監督を務め、本作と同じ津軽を舞台にした短編『けの汁』を監督した千村利光が脚本・監督に決定した。

「本当に、本作が撮れることになったときはメチャクチャうれしかったですね。僕自身は、長編でもショートフィルムでもモチベーションは変わらなくて、お芝居の場に立てることがうれしかったですし、特に今回は、作品の立ち上げから携わるという新しい経験がとても楽しかったです」

 同作は、国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2022』のクロージングイベントとしてもオンライン上映された。今回、感じたショートフィルムの魅力とは?
 
「今回オリジナル作品ということもあったと思うんですが、自由度を感じながら伸び伸びと芝居させていただきました。僕は、原作がある作品もすごく好きなんですけど、ショートフィルムはオリジナル脚本にも挑戦しやすいので、俳優にとっては芝居の幅を広げるいい機会にもなるんじゃないかなと思いました。また今回は、企画や脚本募集から携わるというなかなかできない経験ができたことも大きかったです。こんな機会を頂けたことを、本当にありがたいことだと思っています。実は、これからも年に1本くらい、こういう形でショートフィルムを作っていきたいなと考えているんです」

 撮影は全編、冬の青森県。映像からは、北国の厳しい寒さとそこに暮らす人々の温かさが温度感を持って伝わってくる。場面写真では、伊藤に雪が吹き付け、髪の毛も凍り付いているような…。

「ものすごく寒かったです(笑)。でもそれ以上に楽しかったです。僕たちが撮影していた日は、青森の人たちもビックリするくらい寒い日で。Twitterで“ホワイトアウト”ってトレンド入りしていました(笑)。でも、このタイミングでなければ撮れない画が撮れたんじゃないかなと思います」

 極寒のロケ地では、地元のつがる市フィルムコミッションの人々など現地の人から温かいサポートも。

「現地で頂くものが全部おいしいんですよ。特に、撮影中に地元の方が差し入れてくれた味噌汁が、本当においしくて(笑)。映画の撮影で地方に行くと、現地の方に助けていただくことが多いので、地方ロケではいつも人の温かみを感じていたんですが、今回は特に寒さもあって(笑)その温かみをさらに感じましたね。人って、温かいんだな…って」

『お帰りなさい』メイキング 祖母役・大方斐紗子と

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