〈中居正広が出演見合わせ〉「急性虫垂炎」とはどんな病気?【気になる医療キーワード】
タレントの中居正広さんが急性虫垂炎で入院し、16日に総合司会を務める予定だった音楽番組「音楽の日2022」(TBS系)の出演を見合わせることが発表された。「急性虫垂炎」とはどのような病気なのか。東京都医師会の角田徹先生に解説してもらった記事を再掲する(初出:2020年7月16日、肩書きは当時のまま)。
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「急性虫垂炎」とはどんな病気?
私たちが食べた食べ物は食道から胃に入り、そこから十二指腸に続いて5mほどあると言われる小腸へ送られて体内に消化・吸収され、さらに2mほどの大腸で主に水分が吸収されて最終的に便として体外に排出されます。小腸から大腸へつながる部分の行き止まりに「盲腸」があり、「盲腸」の先端にある「虫垂」という突起物が炎症を起こすことを「虫垂炎」と言います。大腸では便が作られるのですが、何らかの理由で「虫垂」に滞留して排出されず、免疫力が落ちたりするとそれが原因で炎症を起こします。昔は本当に多い病気でしたが、栄養状態が改善されたりさまざまな病気で抗生物質を投与する機会が増えたりして、最近ではこうした炎症を起こすことも少なくなりました。
「急性虫垂炎」の原因は?
「急性虫垂炎」の手術を行うと便だけでなく、「虫垂」の中に「糞石(ふんせき)」といって、腸の内容物が石灰化したものが詰まっていることがあります。そうした異物によって炎症が起こると「虫垂炎」になります。「虫垂」は小指ほどの長さの内腔も細い器官で、通常は便が入っても排出されるのですが、それが滞留すると異物が出来てしまいます。
原因として多いのは、大腸炎やウイルス性の胃腸炎などで下痢をした際に、小腸への血管が走っている腸間膜のリンパ腺が腫れて内容物が遺残しやすくなり、腸内細菌による炎症が発生し「虫垂炎」が起こるのではないかと言われています。
「急性虫垂炎」の症状は?
細菌による炎症性疾患ですから典型的な症状は強い腹痛、特に右の下腹部痛と発熱が起こります。多く見られる症状として、先行する腸炎のために胃のあたりに痛みが出て、その痛みがだんだん右下腹部に移動してきます。また、炎症によって腸の動きが鈍くなるので、お腹が張って便秘を起こしたり気持ちが悪くなって嘔吐したりといったこともあります。
「急性虫垂炎」の検査と診断は?
腹部の診察(触診・聴診)を行います。「急性虫垂炎」は一般的によく知られている消化器官の炎症性疾患ですが、圧迫すると典型的な痛みがあります。そのほかに血液検査で、白血球の数や「CRP」という炎症反応の値が上昇しているかどうかを見ます。また全体的に腸の動きが鈍くなるので、下痢をしていて右下腹部痛と発熱がある場合は、どちらかというとウイルス性胃腸炎の疑いが強くなります。
「急性虫垂炎」では、半日~1日程度で急激な腹痛と発熱が起こります。小児の「急性虫垂炎」の場合、「虫垂」の壁が薄いために虫垂壁に穿孔が生じ、腹腔内に腸の内容物が流れ出てしまうと「腹膜炎」になりやすいです。若い人でも痛みを我慢した結果「腹膜炎」を併発すると、開腹手術をして「虫垂」を切除した後に腹腔内を洗浄してドレーンの挿入・留置を行うこともあります。
「急性虫垂炎」の治療は?
軽症の場合は絶食で腸を安静にして抗生物質を投与します。「腹膜炎」など炎症が周囲に波及している場合は手術となります。
「急性虫垂炎」が疑われたら?
右下腹部痛と発熱があって徐々に悪化してきたら、なるべく早く医療機関を受診してください。軽症の場合は抗生物質の投与で症状が改善することも多いのですが、「腹膜炎」を併発している場合は手術を受けるために10日~2週間の入院が必要です。