100年前の女性が作った植物標本の奇跡 湯島『ポール・ヴァーゼンの植物標本展』
100枚ほどの花の標本は紙製の箱にぴったり収められていた
「植物標本は作者が分からないことが多いのですが、人物が特定できてすべてその人が作ったと分かるものはとても珍しいと思います。彼女の植物標本は、植物の種や根なども採集しているわけではないので、研究資料ではなく、本当に個人的に作っていたものなのでしょう。植物標本にしては台紙も小さく、箱もぴったりのサイズで作ってあって、彼女の心象風景が伝わってくるような作品でした」
箱ごと譲ってもらい、帰国して同年秋に行った展示は評判を呼んだ。そこから5年の歳月を経て、作家の堀江敏幸さんが書き下ろした掌編「記憶の葉緑素」と共に、『ポール・ヴァーゼンの植物標本』という書籍になった。